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林業の魅力シリーズ

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子どもに自然を返そう|『あなたの子どもには自然が足りない』と森のある暮らし

2026年5月29日

林業の魅力シリーズ 今週のテーマ

森は、暮らしを守っている

 

林業というと、山で木を伐る仕事、木材を生産する仕事という印象が強いかもしれません。

もちろん、それは大切な役割です。

でも、森の役割はそれだけではありません。

森は、水をたくわえます。
土を守ります。
空気を整えます。
木のある暮らしを支えます。
子どもが自然に触れる場所にもなります。
そして、人の心を少し落ち着かせてくれます。

今週は、林業を「山の仕事」としてだけではなく、
家族・台所・道具・子ども・暮らし につながる視点から見ていきます。

 

 


林業の魅力シリーズ 第486弾

子どもに自然を返そう

『あなたの子どもには自然が足りない』

と 森のある暮らし

 


はじめに

今週は、森は、暮らしを守っている というテーマで書いてきました。

森は、山の中だけにあるものではありません。

水を守り、土を守り、空気を整え、木のある暮らしを支えています。
台所のまな板や箸にも、森はつながっています。
包丁を研ぐことと、チェーンソーを目立てすることにも、道具を大切にする共通の心があります。
そして昨日は、子どもに残したいのは便利さだけではない、という話をしました。

その流れで、今日紹介したい本があります。

リチャード・ルーブ著、春日井晶子訳の
『あなたの子どもには自然が足りない』 です。

この本は、子どもと自然の関係を考えるうえで、とても大事な一冊です。原著 Last Child in the Woods は、子どもと屋外・自然との距離が広がっている問題を扱い、ルーブ氏が「自然欠乏」という言葉でその状況を示した本として紹介されています。

便利な時代に、なぜ子どもに自然が必要なのか。

今日は、そのことを森と暮らしの視点から考えてみます。

 


子どもは、自然から遠くなっていないか

今の子どもたちは、便利なものに囲まれて暮らしています。

スマホ。
タブレット。
ゲーム。
動画。
習い事。
安全な遊具。
整った室内環境。

それ自体が悪いわけではありません。

便利なものは、暮らしを助けます。
学びを広げます。
体が不自由な人や、移動が難しい人を支えることもあります。

けれど、気をつけなければいけないことがあります。

便利さが増える一方で、
子どもが自然に触れる時間は減っていないでしょうか。

土に触る。
木に触る。
虫を見る。
水に入る。
風を感じる。
火を見つめる。
斜面を登る。
転んで立ち上がる。

こうした体験は、画面の中だけでは十分に得られません。

ルーブ氏の本が投げかける大きな問いは、
子どもから自然を遠ざけたままでよいのか
ということだと思います。

 


自然は、子どもの五感を動かす

森に入ると、子どもの感覚は動きます。

木のざらつき。
土のにおい。
落ち葉の音。
水の冷たさ。
虫の動き。
光のゆらぎ。
風の向き。

子どもは、それを頭だけでなく体で受け取ります。

図鑑で虫を知ることも大切です。
動画で森を見ることも意味があります。

でも、本物の虫が目の前で動いた時の驚きは、画面とは違います。
濡れた土を踏んだ時の感触も、説明だけでは分かりません。
焚き火のあたたかさや煙の匂いも、実際に近くにいなければ体に残りません。

自然体験は、子どもの五感を動かします。

そして、五感が動くと、心も動きます。

森は、子どもの体と心を同時に起こしてくれる場所です。

 


自然は、子どもに問いを出す

自然の面白いところは、正解が一つではないことです。

枝を拾ったら、何に使うか。
石を見つけたら、どう遊ぶか。
斜面があったら、どこを登るか。
水たまりがあったら、入るのか、避けるのか。
虫を見つけたら、近づくのか、観察するのか、逃げるのか。

森は、子どもにたくさんの問いを出します。

そして、すぐに答えを教えてはくれません。

だから子どもは考えます。

どうしたらいいか。
どこまでできるか。
誰と一緒にやるか。
危なくないか。
もう一度やってみるか。

自然は、子どもに考える余白を与えます。

便利な道具は、早く答えを出してくれることがあります。
それはありがたいことです。

でも、子どもには、答えがすぐに出ない時間も必要です。

森の中の迷いは、子どもの考える力を育てます。

 


「自然欠乏」という言葉が教えてくれること

ルーブ氏は、現代の子どもたちと自然との距離が広がっている状況を、原著で “Nature-Deficit Disorder” と表現しました。この言葉は医学的診断名というより、子どもと自然の断絶を考えるための問題提起として広く知られるようになりました。Children & Nature Network も、この言葉は2005年刊行の Last Child in the Woods で紹介されたものだと説明しています。

大事なのは、言葉そのものよりも、その中身です。

子どもに自然が足りなくなると、何が失われるのか。

土に触れる時間。
虫を追いかける時間。
木陰で休む時間。
友だちと外で遊ぶ時間。
少し怖いけれど挑戦する時間。
自分の体で世界を覚える時間。

こういう時間が減っていくと、子どもの感覚はどうなるのか。

この問いは、今の暮らしにとても大切です。

自然を特別なものにしすぎると、子どもは自然から離れます。

遠くの国立公園まで行かなければ自然に触れられない、という話ではありません。

近くの森。
近くの川。
庭。
畑。
雑木林。
公園の木。
落ち葉のある道。

そこからでも始められます。

自然を子どもの暮らしに戻すことが大切なのです。

 


森は、子どもを評価しない

子どもは、毎日の中で評価されることが多いものです。

点数。
順位。
できたか、できないか。
早いか、遅いか。
上手か、下手か。

もちろん、学ぶうえで評価が必要な場面もあります。

でも、子どもには評価されない時間も必要です。

森は、子どもを点数で見ません。

早く登れたから偉い。
虫の名前を知っているから優秀。
きれいな枝を拾えたから合格。

そんなことは言いません。

森の中では、
じっと見ている子も、
走り回る子も、
虫を探す子も、
木を見上げる子も、
枝を集める子も、
それぞれの過ごし方があります。

森は、子どもが自分のペースで関われる場所です。

これは、とても大きな意味があります。

自然の中では、子どもは自分のままでいられる時間を持てます。

 


大人の役目は、自然を取り戻す入口をつくること

子どもに自然が必要だと言っても、
子どもだけでは森に行けません。

特に今の社会では、
安全面もあります。
移動手段もあります。
時間の問題もあります。
親の不安もあります。

だから、大人の役目が大切です。

子どもが自然に触れられる入口をつくる。
森へ行く機会をつくる。
外遊びを見守る。
危険を確認する。
でも、手を出しすぎない。
子どもの発見を待つ。

これは簡単ではありません。

大人は心配です。

汚れる。
転ぶ。
虫がいる。
危ない。
時間がかかる。

そう思います。

でも、すべてを避けてしまえば、子どもは体験できません。

大人は、危険を見極めながら、子どもに自然を返していく必要があります。

子どもの手を放して、目を放さず。

この距離感が、自然体験にはとても大切です。

 


こぴすの原点ともつながる

この本を読むと、NPO法人森林活用研究会こぴすの原点とも重なります。

こぴすが大切にしてきたのは、
森を子どもの居場所にすることです。

子どもに自然を教え込むのではなく、
森の中で見つける。
触る。
転ぶ。
考える。
助け合う。

カリキュラムがないのがカリキュラム。
山そのものが先生。

この考え方は、『あなたの子どもには自然が足りない』が投げかける問題意識ともよく合います。

子どもに自然を返すことは、
特別な教育を追加することではありません。

本来あったはずの体験を、もう一度暮らしに戻すことです。

森は、子どもの感性を育てます。
判断力を育てます。
体を育てます。
家族の記憶を育てます。

だからこそ、こぴすの活動も、もう一度子どもの森へ向かう意味があります。

 


森のある暮らしは、家族の記憶になる

子どもが大人になった時、心に残るものは何でしょうか。

高価なおもちゃも、楽しい記憶になるかもしれません。
ゲームや動画も、その時代の思い出になるでしょう。

でも、自然の記憶は、少し違う残り方をします。

川で濡れた足。
森で拾った枝。
焚き火の煙。
虫を見つけた驚き。
落ち葉を踏む音。
木のにおい。
山で食べたお弁当。

そうした記憶は、体に残ります。

大人になってから、ふとした瞬間によみがえることがあります。

木の香りをかいだ時。
土の匂いがした時。
焚き火を見た時。
雨上がりの森を歩いた時。

自然の記憶は、子どもの心の奥に残る財産です。

森のある暮らしは、家族の記憶を育てます。

 


おわりに

『あなたの子どもには自然が足りない』は、
子どもと自然の関係を考えるうえで、とても大切な本です。

この本が教えてくれるのは、
自然は特別な贅沢ではないということです。

子どもが育つために、自然は必要です。

土に触れる。
木に触れる。
虫を見つける。
水の冷たさを知る。
風を感じる。
火を見つめる。
森の中で少し不便を経験する。

そういう時間が、子どもの感性と生きる力を育てます。

今週は、森は暮らしを守っているというテーマで書いてきました。

森は、水や土や空気を守るだけではありません。
木の道具として台所にも届きます。
道具を整える心にもつながります。
そして、子どもの自然体験を支える場所にもなります。

子どもに自然を返そう。

それは、子どもたちの未来を明るくするだけでなく、
家族の暮らしそのものを豊かにすることでもあります。

森は、暮らしを守っています。
そして、子どもの未来も静かに守っているのです。

 


彩ちゃんのひとこと

「子どもに自然を返すって、特別なことをするというより、
本来あったはずの体験を暮らしに戻すことなんですね。

土に触る。
木に触れる。
虫を見つける。
森で少し不便を感じる。

そういう時間が、子どもの心に残る。

私も、森のある暮らしをもっと大切にしたいと思いました。」

 

 

note更新のお知らせ(5月27日更新)

彩ちゃんの安全物語 第37話

『その距離、本当に安全か?』

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