

2026年8月29日
令和8年度 埼玉県林業技術者育成研修
FORESTRY TRAINING REPORT|DAY 13
2026年8月29日(土)、令和8年度埼玉県林業技術者育成研修Day13を実施しました。
本日の研修は、チェーンソー特別教育・学科7時間です。
参加者は4名。
これまでの研修では、森林調査、コンパス測量、OWLによる3次元計測、安全衛生、普通救命講習などを学んできました。
そして今日から、いよいよ林業の代表的な機械であるチェーンソーについて本格的に学び始めます。
しかし、最初から木を切るわけではありません。
まず覚えるのは、
安全です。
正しいチェーンソーの使い方。
正しい作業方法。
危険な行動。
そして、絶対にやってはいけないこと。
知識を身につけることが、林業災害を減らす第一歩になります。
朝は恒例の表情体操から始まりました。
長時間の学科講習になる一日ですが、まずは声を出し、表情を動かして研修モードへ切り替えます。
安全教育というと、機械や作業方法だけに目が向きがちです。
しかし、作業するのは人です。
疲れていないか。
集中できているか。
仲間の様子はいつもと違わないか。
自分と周囲の状態を確認することも、安全な作業の基本です。
チェーンソーの使い方を覚える前に、まず林業でどのような災害が起きているのかを確認しました。
事故の数字を見る目的は、怖がらせることではありません。
なぜ事故が起きるのかを知り、同じ事故を繰り返さないためです。
チェーンソーを正しく扱えても、作業方法が間違っていれば事故につながります。
反対に、危険を理解し、正しい手順を守れば、事故の可能性を減らすことができます。
安全教育では、
「気をつけましょう」
だけでは足りません。
何が危険なのか。
なぜ危険なのか。
どうすれば防げるのか。
そこまで理解することが重要です。
伐倒を学ぶうえで重要になるのが、木の重心です。
木は一本一本違います。
幹が傾いている。
枝が片側へ多く張っている。
樹冠の形が偏っている。
こうした違いによって、木が倒れようとする方向も変わります。
見た目だけで、
「たぶん、こちらへ倒れるだろう」
と判断するのは危険です。
木全体を見て、どこに重さが偏っているのかを考える。
伐倒作業は、チェーンソーを木へ当てる前から始まっています。
切る技術の前に、木を見る技術が必要です。
講義では、伐倒作業に関係する基本的な数値についても学びました。
受け口や追い口などは、感覚だけでつくるものではありません。
どの程度切り込むのか。
どの位置に追い口をつくるのか。
ツルをどのように残すのか。
それぞれに理由があります。
特に伐倒では、一度切ってしまえば簡単には元へ戻せません。
だからこそ、
「このくらいでいいだろう」
ではなく、基本となる考え方や数値を理解したうえで作業する必要があります。
実技へ入ったときには、今日学んだ内容を実際の丸太や立木で確認していきます。
チェーンソーの安全装置として重要なのが、チェーンブレーキです。
チェーンブレーキは、キックバックなどが起きた際にソーチェーンの動きを素早く止め、重大な事故を防ぐための装置です。
講義では、スチール社のチェーンソーに備わっているチェーンブレーキと、自動的に作動する機構について、実機を使いながら確認しました。
安全装置が付いているから安心、ということではありません。
どのようなときに作動するのか。
正しく機能しているか。
作業前に何を確認すべきか。
そこまで理解して初めて、安全装置を生かすことができます。
チェーンソーを使用する前には、チェーンブレーキが正常に作動するかを確認する。
これも、毎日の作業で欠かしてはいけない基本です。
チェーンソーを安全に使い続けるには、操作方法だけでなく、日常の点検や整備も重要です。
講義では、マフラー周辺にカーボンが付着した場合の確認方法や対処についても、実機を使って説明しました。
燃焼によって発生したカーボンが蓄積すると、機械本来の性能に影響することがあります。
異常を感じてから慌てて見るのではなく、
などを日頃から確認することが大切です。
チェーンソーは「切れればよい」機械ではありません。
正しく使い、正しく点検し、正しく整備する。
そこまで含めて、チェーンソーを扱う技術です。
今日、一番伝えたかったのはここです。
チェーンソーを扱うためには、上手な切り方を覚えるだけでは足りません。
まず、
やってはいけないことを知り、やらないこと。
これが重要です。
慣れてくると、
「これくらいなら大丈夫」
「少しだけだから」
「今まで何ともなかったから」
という気持ちが生まれることがあります。
しかし、安全作業では、その小さな油断が事故につながります。
正しい方法を知っていて、あえて守らない。
これは技術不足とは別の問題です。
研修の段階から、
知っている安全を、実際の行動にする
ところまで身につけてもらいたいと思います。
特別教育を修了することは大切です。
しかし、この研修の目的は修了証を手にすることだけではありません。
実際の林業現場で、
安全にチェーンソーを使えること。
危険な作業を見抜けること。
仲間が危険な行動をしていたら止められること。
そして将来、後輩へ正しい作業方法を伝えられること。
そこまでできて初めて、この研修で目指している林業技術者に近づきます。
今年度は、単なる作業者ではなく、安全を周囲へ伝えられる指導者を育てることも大きな目標です。
本日は一日を通して、チェーンソーに関する知識と安全について学びました。
実技が始まれば、チェーンソーの音、振動、切削、木の動きなど、考えなければならないことが一気に増えます。
だからこそ、その前に頭の中へ安全の基本を入れておく必要があります。
技術は練習によって上達します。
しかし、安全は、
「あとで覚えればいい」
では遅いのです。
最初から安全なやり方で覚える。
それが一番確実です。
次回は8月30日(日)、Day14。
チェーンソー特別教育・学科2時間に続き、刈払機安全衛生講習・学科5時間を行います。
そのために、まず自分と仲間の命を守れる技術者を育てていきます。
※フォレストカレッジホームページ
https://www.young-leaves.com/