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森の仕事人日記

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講師は、質問が出ない時ほど教え方を見直している

2026年9月29日

森の仕事人日記 第12回

はじめに|林業研修では「質問がない=理解した」とは限らない

 

 

林業研修で説明を終えたあと、講師はよく聞きます。

「ここまでで質問はありますか?」

誰も手を挙げない。

すると、

「分かってもらえたかな」

と思いたくなります。

でも、必ずしもそうとは限りません。

何が分からないのか整理できていない。

みんなの前では聞きにくい。

質問するほど自信がない。

説明を聞いた時には分かったつもりでも、実際にやってみると手が止まる。

そんなこともあります。

だから講師は、質問が出ない時ほど研修生の様子をよく見るようになります。

 


林業研修で質問が出ない研修生の様子を観察し教え方を考えるFOREST COLLEGEの彩ちゃん

 


林業研修では、言葉より先に手が止まることがある

実技では分かりやすい瞬間があります。

説明したあと、

道具を持つ。

作業位置へ入る。

いざ始めようとする。

そこで手が止まる。

周囲を見る。

隣の人の動きを見る。

講師を見る。

口では「分かりました」と言っていても、動きには迷いが出ることがあります。

林業研修では、言葉だけでは見えなかった理解度が、動作になると見えてくることがあります。

だから質問だけを待ってはいません。

手。

足。

視線。

姿勢。

始めるまでの間。

そこにも目を向けます。

 


「分かりました」を、そのままゴールにしない

講師が、

「分かりましたか?」

と聞けば、

「はい」

と返ってくることがあります。

もちろん、本当に理解している人もいます。

でも「はい」は、とても答えやすい言葉です。

そこで、

「じゃあ、やってみましょう」

と実際に動いてもらいます。

すると、

できるところ。

迷うところ。

順番が入れ替わるところ。

が見えてきます。

理解したかどうかは、返事だけではなく、次の行動まで見て確かめる。

これは林業研修で大切にしたいところです。

 


林業研修では、質問を待つだけでは足りない

「分からなければ質問してください」

それだけでは、質問できない人もいます。

だから講師側から、

「ここはどうする?」

「次は何を見る?」

「この時、どこに立つ?」

と聞いてみます。

試験のように追い込むためではありません。

どこまで伝わっているのかを一緒に確認するためです。

答えが出なければ、そこをもう一度説明できます。

少し違う言葉にする。

実際の道具を見せる。

動きを分ける。

立つ位置を変える。

質問が出てこなくても、理解を確かめる方法はいくつもあります。

 


講師自身の説明を疑ってみる

研修生が分からない時、

「ちゃんと聞いていなかったのかな」

と考えるのは簡単です。

でも講師側にも振り返れることがあります。

説明が長すぎなかったか。

専門用語を使いすぎなかったか。

一度に伝えすぎなかったか。

大事なところが見えにくくなかったか。

言葉と実演がずれていなかったか。

伝わらなかった時は、受け手だけでなく、伝え方も見直してみる。

林業研修では、それによって次の説明が変わります。

 


質問が出ない林業研修ほど、表情を見る

質問がなくても、表情には小さな変化が出ることがあります。

説明を聞きながらうなずいている。

途中から視線が止まる。

周囲の人を見る。

道具と講師を交互に見る。

少し考え込む。

もちろん、表情だけで理解度を決めつけることはできません。

でも、

「ここでもう一度確認した方がいいかな」

と気づくきっかけにはなります。

講師の仕事は、話すことだけではありません。

見ている時間もあります。

 


一人が止まっているなら、説明を変える

実技研修では、全員が同じ速度で覚えるわけではありません。

すぐにできる人。

一度見れば分かる人。

何度か繰り返すと分かる人。

順番を一つずつ確認したい人。

それぞれ違います。

だから、一人が止まっている時に、

「早くしてください」

だけでは前へ進みません。

どこで止まったのかを見る。

一つ前へ戻る。

動きを小さく分ける。

もう一度見せる。

教え方の方を少し変えると、動き出せることがあります。

 


第10回・第11回から続く「伝える技術」

森の仕事人日記 第10回では、

「講師は、実演する前に『どこから見せるか』を考えている」

という話を書きました。

第11回では、

「現場で伝える言葉は、短いほど迷いが少ない」

という話でした。

今回の第12回は、その続きです。

どこから見せるか。

どう短く伝えるか。

そして、

本当に伝わったのかを見る。

林業研修では、説明した瞬間に指導が終わるわけではありません。

その後の反応まで見て、初めて次の教え方が決まります。

 


林業研修で大切なのは「質問できる空気」もつくること

質問が出ない理由の一つに、

「こんなことを聞いたら恥ずかしい」

という気持ちがあるかもしれません。

だから講師側も、

「そこは迷いやすいところです」

「最初は分からなくて普通です」

「もう一回確認しましょう」

と言える雰囲気をつくります。

誰か一人が質問すると、

「実は自分もそこが分からなかった」

ということもあります。

質問は、分からない人だけのものではありません。

一人の質問が、全員の確認になることもあります。

 


おわりに|林業研修では、沈黙も見ている

「質問はありますか?」

誰も手を挙げない。

その瞬間、講師の仕事が終わったとは限りません。

むしろ、

ここから何を見るか。

どう確かめるか。

どう言い換えるか。

を考えます。

質問がない。

だから理解した。

ではなく、

質問がないからこそ、もう一度様子を見る。

それが現場で教える時には大切です。

林業研修では、講師は説明する人であると同時に、観察する人でもあります。

話す。

見せる。

見る。

確かめる。

そして必要なら、また伝え直す。

教え方も、現場を見ながら少しずつ変えていく。

それも森の仕事人が持っている技術の一つだと思います。

 


彩ちゃんのひとこと

「『質問ありますか?』で誰も手を挙げなかったら、みんな分かったんだと思っていました。

でも、質問できないこともあるんですね。

手が止まっていないか。

迷っていないか。

実際にできるか。

そこまで見るのが講師の仕事。

伝えたかではなく、伝わったかを見る。

私もそこを大切にしたいです。」

 


note更新のお知らせ(9月23日更新)

彩ちゃんの安全物語54話

『その数字、見ただけで終わっていないか?』

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