

2026年9月7日
朝、現場へ集まります。
道具もある。
人もそろった。
天気も悪くない。
「それでは始めよう」
と、すぐ山へ入りたくなります。
でも、その前にほんの数分だけ確認する。
今日どこをやるのか。
誰が何をするのか。
どこに注意するのか。
何時頃まで作業するのか。
それだけで、一日の動きがずいぶん変わります。
森の仕事は、朝の5分で一日の迷いを減らせる。
長い会議ではありません。
みんなが同じ方向を向いてから仕事を始めるための、短い時間です。
作業を始めてから、
「今日はどこからやるんだっけ?」
「これは誰がやる?」
「こっちはもう終わったの?」
となることがあります。
そのたびに止まります。
聞きます。
探します。
戻ります。
一つひとつは小さな時間です。
でも積み重なると、仕事の流れが途切れます。
さらに林業では、単なる効率だけの問題ではありません。
人によって作業の認識が違えば、安全上の判断もずれることがあります。
だから最初にそろえる。
当たり前のようですが、これが一番大切です。
今日の作業場所。
開始する位置。
終わりの目安。
昨日からの続き。
作業範囲をみんなで共有します。
同じ山に入っていても、一人ひとりの頭の中にある地図は違います。
「この辺り」
ではなく、
「今日はここからここまで」
と共通認識を作る。
それだけで、動きやすくなります。
全員が何でもできる現場でも、
今日は誰が何をするのか。
大まかに決めておくと動きやすくなります。
伐倒する人。
補助する人。
集材を見る人。
周囲を確認する人。
もちろん作業途中で変わることもあります。
でも、最初に役割が分かっていれば、
「誰かがやるだろう」
が減ります。
逆に、
「二人とも同じことをしていた」
という無駄も減ります。
役割を決めることは、人を縛ることではなく、迷いを減らすことです。
現場には毎日変化があります。
落ち枝。
ぬかるみ。
倒木。
滑りやすい斜面。
機械の出入り。
昨日までなかった危険が、今日はあるかもしれません。
530弾でも、
「昨日と同じ道も同じではない」
という話をしました。
だから、
「前にも言ったから大丈夫」
ではなく、
今日の危険は、今日もう一度確認する。
短い一言でも構いません。
「あそこの斜面は朝露で滑る」
「今日はこの林道を車が通る」
それだけで、意識が変わります。
仕事を始めると、区切りのいいところまで続けたくなります。
すると休憩が後ろへずれることがあります。
特に、
「あと一本」
「あと少し」
が続くと、予定していた休憩を忘れてしまいます。
だから朝の時点で、
「午前中はこの辺りで一度止めよう」
と大まかに決めておく。
天候や体調で変えて構いません。
でも、最初から休憩も仕事の中へ入れておくことが大切です。
朝の短い共有には、もう一つ意味があります。
質問しやすくなります。
説明が終わった後に、
「分からないことある?」
と聞く。
そこで、
「この木は今日やりますか?」
「ここは入っていいですか?」
という疑問が出れば、作業前に解決できます。
仕事が始まってから、
「たぶんこうだろう」
で動くよりずっと安全です。
分からないことを残したまま始めない。
523弾で扱ったテーマともつながります。
ここで大切なのは、
「朝礼を長くやれば安全になる」
という話ではないことです。
話が長くなりすぎると、何が大切だったのか分からなくなります。
今日の作業。
役割。
危険箇所。
天候。
休憩。
必要なら一つ、特に注意すること。
それくらいで十分な日もあります。
短く、具体的に、今日必要なことだけ。
だからこそ、毎日続けやすくなります。
朝に決めたからといって、その通りに全部進める必要はありません。
雨が降る。
木の状態が違う。
人の体調が変わる。
機械に不具合が出る。
森の現場では、予定変更が普通にあります。
大切なのは、
「朝に決めたから絶対やる」
ではなく、
最初に共通の基準を持って、変化があればみんなで変えること。
522弾で書いた、
「予定を変えられる人ほど長く続く」
にもつながります。
朝、
今日の作業を共有する。
夕方、
どこまで進んだかを確認する。
そして次の人へ渡す。
532弾では、
「森の仕事は、次の人に渡すところまでが仕事」
と書きました。
つまり仕事は、
朝の共有から始まり、
夕方の引き継ぎで終わる。
その間をみんなでつないでいます。
良い現場ほど、作業そのものだけでなく、始め方と終わり方が整っています。
森へ入る前の5分。
今日どこをやるのか。
誰が何をするのか。
どこが危ないのか。
どこで休むのか。
分からないことはないか。
それを確認する。
たった数分です。
でも、その数分が、
探す時間を減らす。
迷う時間を減らす。
思い込みを減らす。
そして、安全につながります。
森の仕事は、朝の5分で一日の迷いを減らす。
すぐ作業へ入ることが、必ずしも早い仕事とは限りません。
一度立ち止まり、
今日の仕事をみんなでそろえてから始める。
その5分も、立派な森の仕事です。
「早く仕事を始めるなら、すぐ森へ入った方がいいと思っていました。
でも、最初の5分で役割や危険箇所を確認しておけば、その後に迷う時間が減るんですね。
今日どこをやるのか。
誰が何をするのか。
どこに注意するのか。
仕事を始める前に、みんなの頭の中をそろえる。
それも安全な現場をつくる技術なんだと思いました。」
※フォレストカレッジホームページ
https://www.young-leaves.com/