

2026年10月31日
令和8年度 埼玉県林業技術者育成研修|チェーンソー
FORESTRY TRAINING REPORT|DAY 29
2026年10月31日(土)、令和8年度埼玉県林業技術者育成研修Day29では、チェーンソーのVRシミュレーターを使った安全教育を行いました。
本日の参加者は4名。
これまでの研修では、実際のチェーンソーを使って、水平切り、斜め切り、受け口作りと、一つひとつの技術を積み重ねてきました。
今日は少し違う角度から、林業の安全について学びます。
使用したのは、**「林業労働災害・伐木技術教育VRシミュレーター」**です。
午前中は、実際に発生した労働災害をもとにしたVR体験。
午後は、正しい伐倒手順を学ぶ伐木技術教育システム。
どちらも、林業の現場で事故を起こさないための重要な学習です。
今日、最も伝えたかったことは、ただ一つ。
「やってはいけないことは、絶対にやらない。」
ほこの基本を、VRを通して学ぶ一日となりました。
今朝も、日直の号令とともに一日が始まりました。
毎朝恒例の顔の表情体操。
正式には、**「運気の上がる顔の表情体操」**と呼んでいます。
この体操には、四つの運動があります。
①「あいうえお」の発声
「あ・い・う・え・お」を、それぞれ5秒間ずつ発声します。
② 指の耳はさみ
指で耳をはさみ、左右20回行います。
③ 舌の口内周回
舌を口の中で周回させる運動を、それぞれ20回行います。
④ あごの持ち上げ
人差し指と中指であごをはさみ、持ち上げる動作を5回行います。
この表情体操は、ただ顔を動かすためだけのものではありません。
日直がみんなの前に立ち、運動を進めることにも意味があります。
人前で話すこと。
相手の様子を見ながら進めること。
そして、仲間とコミュニケーションを取ること。
森林の現場では、声や合図を確実に伝え合う必要があります。
毎朝の小さな習慣も、現場で必要になる力につながっているのです。
今日の最初の研修は、林業労働災害VR体験です。
林業は、さまざまな危険と隣り合わせの仕事です。
木の倒れる方向。
枝や幹の動き。
足元の状態。
周囲で作業している人との位置関係。
ほんの一つの判断が、重大な事故につながることがあります。
だからこそ、災害事例を学ぶことが重要です。
しかし、文章や写真だけで事故を理解することには限界があります。
「危険だと分かっていたのに、なぜその行動をしてしまったのか」
「そのとき、周囲には何があったのか」
そんなことを考えるために、今回はVRシミュレーターを使いました。
事故が発生する場面を疑似体験し、危険な行動を自分の問題として考える。
これが、今日の最初の目的です。
林業労働災害VR体験には、実際の災害をもとにした事例が用意されています。
本日は、その中から事例1から事例8を体験しました。
VRゴーグルを装着し、仮想空間の林業現場へ入ります。
画面を見るだけではなく、身体の向きやチェーンソー型コントローラーの操作を通して、仮想空間の状況を体験します。
実際の森林で危険な状況を再現することは、簡単にはできません。
何より、本当に事故を起こしてしまっては、取り返しがつきません。
VRであれば、現実の災害に巻き込まれることなく、危険な状況を教材として体験できます。
ただし、VRはあくまでもシミュレーションです。
実際の森林では、地形や木の状態、天候などによって状況が変わります。
だからこそ、VRで体験したことを実際の現場での判断につなげることが大切になります。
VR体験では、事故の場面を見るだけで終わりにはしません。
講師による解説を交えながら、その事故について考えていきます。
どのような状況で事故が起きたのか。
どの判断に危険があったのか。
事故を防ぐためには、何を確認すべきだったのか。
こうしたことを振り返ることが重要です。
林業の労働災害には、危険な状況を見落としたり、禁止されている作業方法を選んだりしたことで発生するものがあります。
慣れているから大丈夫。
今まで事故がなかったから大丈夫。
少しだけなら大丈夫。
そんな判断が、事故につながることもあります。
大切なのは、危険な作業をうまくできるようになることではありません。
危険な作業を選ばないことです。
事故が起きた後に反省するのではなく、事故を起こさないために判断する。
そのために、過去の災害事例から学ぶ必要があります。
チェーンソーの技術を学ぶと、できることが少しずつ増えていきます。
最初は怖かった操作にも慣れてきます。
切断する速さも上がり、作業に余裕が生まれることもあります。
しかし、そこで忘れてはいけないことがあります。
技術が身についたからといって、危険な行為が安全になるわけではありません。
林業には、決して行ってはいけない作業があります。
例えば、かかり木を処理するときの禁止作業などは、その代表的なものです。
作業者がどれほど経験を積んでいても、禁止されている方法を選んではいけません。
これは、初心者だけに必要な知識ではありません。
長年チェーンソーを使っている人にも、常に意識してほしい基本です。
できることが増えても、やってはいけないことは変わらない。
VRを通して、そのことを改めて考える機会になりました。
午後は、**「伐木技術教育システム」**を使った研修です。
午前中が「危険な作業を知る」学習だったのに対し、午後は「正しい手順を身につける」学習です。
今回は、「伐木ガイド」のコーチモードを使用しました。
このモードでは、ガイダンスを参考にしながら、基本的な伐木作業の流れを学ぶことができます。
伐木作業は、単に受け口と追い口を切ればよいわけではありません。
作業前の確認。
伐倒方向の判断。
退避場所や退避経路の確認。
受け口と追い口の作業。
そして、伐倒後の安全確認。
それぞれの工程には、意味と順番があります。
正しいことを、正しい順番で行う。
その流れを繰り返し学べることが、このVR教材の大きな特徴です。
これまでの実技研修では、受け口作りを繰り返し練習してきました。
Day25では、下切りと斜め切りを正確に合わせること。
Day26では、伐倒方向を意識した受け口作り。
Day27・Day28では、基本の精度をさらに高めることに取り組みました。
しかし、伐木作業では、受け口だけが正しくできればよいわけではありません。
その前に、周囲を確認する。
木の状態を確認する。
安全に退避できる場所を確保する。
そして、作業の目的と順番を理解する。
一つひとつの行動が、安全な伐倒につながっていきます。
コーチモードでは、こうした手順を確認しながら進めていきます。
重要なのは、単に操作を暗記することではありません。
なぜ、その確認を先に行う必要があるのか。
そこまで理解することです。
実際の森林では、VRと同じ条件になるとは限りません。
だからこそ、手順の意味を理解していれば、その場の状況に応じた安全な判断につなげることができます。
写真は、VRで伐木作業の場面を体験している様子です。
スクリーンには森林の作業場面が映し出されています。
これまでの実習では、本物の丸太を使って受け口作りを練習してきました。
今日は、その技術を安全に使うための判断や手順を、仮想空間の中で確認しました。
実際に木を切る技術。
危険を予測する力。
正しい手順を守る力。
そのどれか一つだけでは、安全な伐木作業はできません。
技術と安全は、別々に学ぶものではなく、常に一緒に身につけていくものです。
VRで学んだことも、次の実技研修で生かしていきたいと思います。
今日の研修を通して、あらためて伝えたいことがあります。
林業では、危険な作業を上手に行えるようになることを目標にしてはいけません。
事故を起こさないために、何をしてよいのか。
何をしてはいけないのか。
そして、どのような手順を守らなければならないのか。
それを理解することが、何より重要です。
危険を知ること。
正しい方法を学ぶこと。
そして、現場で実行すること。
今日のVR研修には、その三つの学びがありました。
「やってはいけないことは、絶対にやらない。」
この言葉を、知識として覚えるだけではなく、実際の作業で守れるようになってほしいと思います。
次回は2026年11月1日(日)、Day30。
チェーンソーを使った伐木造材作業実技に戻ります。
これまで練習してきた受け口作り。
今日VRで確認した安全と伐倒手順。
その両方を意識しながら、次の学習へ進んでいきます。
VRで正しい手順を知ることは大切です。
しかし、本当に重要なのは、その知識を実際の現場で生かせることです。
安全確認を省略しない。
危険な作業方法を選ばない。
分からないことがあれば、立ち止まって確認する。
そうした基本を、これからも一つずつ身につけていきます。
チェーンソーを使いこなす技術だけでは、林業の仕事はできません。
危険を知り、正しい手順を守り、安全に仕事を終えること。
「やってはいけないことを、やらない。」
その当たり前を、当たり前に実行できる林業技術者を育てていきたいと思います。
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※note(彩ちゃんの安全物語)
https://note.com/forestcollege/n/n3f22f4a6ef23