

2026年8月22日
令和8年度 埼玉県林業技術者育成研修
FORESTRY TRAINING REPORT|DAY 11
2026年8月22日(土)、令和8年度埼玉県林業技術者育成研修Day11を実施しました。
本日の研修は、森林3次元計測システム「OWL」を使った森林計測です。
参加者は5名。
お盆期間を挟み、研修は約2週間ぶりとなりました。
午前は実際の森林へ入りOWLによる計測を行い、午後は教室へ戻って計測データを結合・解析しました。
今回確認したのは、
木の本数
樹高
材積
木の曲がり
林内地形
作業道を想定した地形の確認
などです。
これまで巻尺や釣り竿、コンパスを使って人の手で森を測ってきた研修生たち。
今日は、その森がコンピューターの画面上に3次元データとして現れます。
約2週間ぶりの研修となりましたが、5名全員が元気に集まりました。
朝会では、恒例の表情体操からスタート。
林業研修もDay11まで進み、研修生同士の雰囲気もずいぶん自然になってきました。
この日は、これまでの測量とはまったく違う最新の森林計測技術を学びます。
いきなり山へ入るのではなく、まず教室でOWLの機器名称や基本的な使い方を確認しました。
新しい機械ほど、「とりあえず使ってみる」ではなく、何のための部品なのか、どのような手順で計測するのかを理解してから使うことが大切です。
これまで学んだコンパス測量でも同じでした。
便利な機械だからこそ、基本操作を理解する。
機械任せにするのではなく、人が仕組みを理解したうえで使うことが重要です。
準備が整ったところで森林へ移動します。
今年度の集合写真の掛け声は、すっかり定番になった、
「キューティーハニー!」
です。
真面目な実習に入る前にも、自然と笑顔が出ます。
このあと5名は、OWLを持って林内へ入りました。
OWLによる計測では、所定の位置で機器を構え、計測中は一定時間動かずに待ちます。
この日は、約45秒間じっと静止。
しかも斜面です。
機器は、斜面そのものに合わせて傾けるのではなく、計測条件に合わせて正しく保持する必要があります。
45秒。
数字だけを聞けば短く感じます。
しかし、斜面の上で機器を持ったまま動かずにいると、意外に長い時間です。
まさに「じっと我慢の子」。
計測中、ほかの研修生はOWLから見えない場所へ移動します。
写真だけを見ると、山の中でかくれんぼをしているようにも見えます。
しかし、遊んでいるわけではありません。
計測データへ人が入り込まないよう、OWLの視界から外れて待っています。
森林そのものを正確に記録するためには、計測する人だけでなく、周囲の人の動きにも注意が必要です。
OWLによる計測は、一か所だけ測れば終わりではありません。
林内を移動しながら複数地点で計測を行い、それぞれのデータを後でつないでいきます。
木が多い場所。
斜面。
見通しの変わる場所。
地形を考えながら計測点を設定していきます。
これまでのコンパス測量では、測点から測点へ角度と距離を測りました。
OWLでは方法は違いますが、
「どこで測るか」
が重要であることは同じです。
午前中の計測が無事に終了しました。
しかし、この段階ではまだ本当に成功したかどうかは分かりません。
林内で計測したデータがきちんとつながっているのか。
木や地形が正しく取得できているのか。
それを確認するのは午後の解析です。
研修生にとっては、
「ちゃんと写っているだろうか」
と少しドキドキしながら教室へ戻ることになりました。
午後は、午前中に取得したデータをパソコンへ取り込み、結合と解析を行いました。
画面に現れたのは、午前中に歩いていた森林です。
しかし、普通の写真ではありません。
一本一本の木や地表が3次元データとして表示されます。
現地では木々に囲まれて全体像が見えにくかった森林が、画面上では別の視点から確認できます。
解析を進めると、林内の木々をデータとして確認できるようになります。
木の本数。
樹高。
材積。
木の位置。
曲がりの状態。
現地で一本ずつ巻尺を当てて測っていた森林が、3次元空間の中で数字として表示されていきます。
もちろん、機械が数字を出したからといって、それだけで森林を理解できるわけではありません。
数字が何を意味しているのかを理解するためには、これまで学んできた測樹や森林調査の知識が必要です。
今回、特に興味深かったのがこの比較です。
Day7で行った「森の健康診断」では、手入れされた人工林へ入り、
木の本数
胸高直径
樹高
林内の混み具合
などを、人の手で一つずつ調べました。
今回は、その同じ場所をOWLでも計測しました。
そして解析結果を比べてみると、手作業で調査した結果とOWLの計測結果がかなり近い数字になりました。
これは研修生にとって大きな成果です。
最新の機械が正しかった、というだけではありません。
これまで巻尺や釣り竿を使って地道に行った森の健康診断が、かなり正確にできていたことを、デジタル計測の結果が大きく裏付けてくれました。
アナログとデジタル。
方法は違っても、同じ森を正しく測れば、結果は近づいていきます。
OWLで取得した3次元データからは、樹木だけでなく地形も確認できます。
この日は、地形データを使って作業道をつくる場合を想定し、切土や盛土についても確認しました。
山の中では、現地に立っているだけでは地形全体を把握しにくいことがあります。
3次元データとして見ることで、
「ここを通したらどうなるのか」
「どの程度地形を変える必要があるのか」
といった検討もしやすくなります。
実際に道をつくる前に考える。
これも、デジタル技術を森林管理へ生かす方法の一つです。
Day7では、巻尺や釣り竿を持って山へ入りました。
Day8・Day9では、三脚とコンパスを据えて測量しました。
Day10では、電卓を片手に三角関数や誤差計算と格闘しました。
そしてDay11では、森林が3次元データとして画面に現れました。
一見すると、最新の機械があれば、昔ながらの測り方を学ばなくてもよいように感じるかもしれません。
しかし、そうではありません。
木の太さとは何か。
樹高とは何か。
材積とは何か。
測量誤差とは何か。
森林の混み具合とは何か。
それを理解しているからこそ、画面に表示された数字の意味が分かります。
アナログを学ぶことは、デジタルを使いこなすための土台です。
人が巻尺で測る。
コンパスで測る。
3次元計測システムで測る。
方法は変わります。
しかし、目的は同じです。
森の状態を正しく知り、次に何をすべきか判断すること。
最新技術は、人の経験を不要にするものではありません。
これまで培ってきた森林を見る目に、新しい情報を加えてくれる道具です。
今回、手作業の森の健康診断とOWLの結果が近かったことで、研修生もこれまでの実習が決して別々のものではなかったことを実感できたと思います。
森を歩いて測った数字が、画面の中の3次元データへつながった。
Day11は、これまでの学びが一つにつながった一日となりました。
次回は8月23日(日)、Day12。
安全衛生管理実技として普通救命講習を行います。
機械や技術を学ぶことも大切です。
しかし、そのすべての前提にあるのは、人の命を守ることです。
森で働く。未来を育てる。
アナログもデジタルも使いながら、森を正しく見る力を育てていきます。
※フォレストカレッジホームページ
https://www.young-leaves.com/