

2026年9月21日
森で過ごす時間というと、何を思い浮かべるでしょうか。
ハイキングをする。
植物を観察する。
写真を撮る。
木の実を拾う。
もちろん、どれも楽しい過ごし方です。
でも今日は、少し違います。
何もしない。
目的地も決めない。
歩いた距離も数えない。
珍しいものを探そうともしない。
ただ森の中にいる。
シルバーウイークの一日くらい、そんな時間があってもいいのではないでしょうか。
連休になると、
「せっかくの休みだから」
と考えます。
どこかへ行こう。
何かをしよう。
普段できないことをしよう。
気がつくと、休日にも予定表ができています。
朝から出かける。
何時までに着く。
次はここへ行く。
夕方までに戻る。
楽しいはずの休日なのに、いつの間にか時間に追われていることがあります。
だから、森へ行く時くらいは、
予定を一つ減らしてみる。
そんな休み方もあります。
森へ入ったら、歩き続けなくても構いません。
少し気になる木を見つけたら、その近くで休んでみます。
ベンチがなくてもいい。
立ったままでもいい。
安全な場所なら、少し腰を下ろしてもいい。
最初の数分は、
「何をしよう」
と考えるかもしれません。
でも、しばらくすると、その必要がなくなってきます。
風が来る。
葉が揺れる。
鳥が鳴く。
遠くで枝が落ちる。
それまで背景だった森の音が、一つずつ聞こえ始めます。
人間が動かなくても、森は止まっていません。
木漏れ日の位置が変わります。
風が通ります。
虫が歩きます。
雲が動けば森の明るさも変わります。
鳥の声が近づいたり、遠ざかったりします。
何もしないというのは、何も起きないということではありません。
自分が動くのをやめると、今まで見えていなかった森の動きが見えてきます。
それは少し不思議な時間です。
最初は退屈するかもしれません。
スマートフォンを見たくなる。
何か写真を撮りたくなる。
別の場所へ移動したくなる。
それも自然なことです。
でも、ほんの少しだけそのままでいてみます。
「暇だな」
と思う時間を、すぐ何かで埋めなくてもいい。
すると頭の中まで少し静かになってきます。
普段は次から次へと考えていたことが、少し遠くへ行きます。
森で過ごす時間は、情報を足す時間ではなく、減らす時間にもなります。
ぼんやり座っていると、目の前の一本の木が気になることがあります。
樹皮はこんな模様だったのか。
枝はあんな方向へ伸びているのか。
根元には小さな植物がある。
同じ木を毎日見ていたとしても、じっくり見る時間は意外とありません。
「観察しよう」
と思って見るのとは少し違います。
何もしなかったから、自然に目に入ってきた。
そんな発見です。
先日の「こぴすの森だより」では、子どもが森で**「自分だけの場所」**を見つける話を書きました。
でも、これは子どもだけの話ではないのかもしれません。
大人にも、
なぜか落ち着く木。
好きな景色。
座りたくなる場所。
また来たくなる場所。
があっていい。
誰かに教えてもらった名所ではなく、
自分で見つけた普通の場所。
そういう場所が一つあるだけで、森との距離は少し近くなります。
仕事では成果を求めます。
どこまで進んだか。
何ができたか。
何が残ったか。
それは大切なことです。
でも休日まで、
「今日は何をしたのか」
と採点しなくてもいいと思います。
今日は森で一時間座っていた。
それだけ。
写真も撮らなかった。
何も持ち帰らなかった。
それでも、
「気持ちよかった」
と思えたなら、それで十分です。
森の中にいると、少し面白いことに気づきます。
木は急いでいません。
昨日より今日、突然大きくなるわけではありません。
春に芽を出し、夏に葉を広げ、秋になり、冬を越す。
同じ場所で長い時間を過ごしています。
人間だけが、
「早く」
「次へ」
「もっと」
と急いでいるように感じることがあります。
もちろん、毎日の生活では急ぐ必要もあります。
だからこそ休日くらい、
森の時間に人間の方が合わせてみる。
それも面白いのではないでしょうか。
しばらく休んでいると、
「少し歩こうかな」
と思うことがあります。
これは、
「歩かなければならない」
とは違います。
自分から動きたくなった。
その時に歩けばいい。
少し歩いて、また止まる。
気になる場所があれば座る。
森の中では、予定ではなく自分の感覚で動いてみる。
普段とは少し違う時間の使い方です。
連休が終わった時、
「何をした?」
と聞かれることがあります。
旅行へ行った。
買い物をした。
イベントへ行った。
そんな答えもいい。
でも、
「森で何もしなかった。」
という答えがあってもいいと思います。
木の下に座った。
風が吹いていた。
鳥が鳴いていた。
気がついたら一時間経っていた。
何も達成していません。
それでも、その時間はちゃんと残っています。
森で過ごす時間に、いつも目的はいりません。
何かをするためではなく、ただそこにいるために森へ行く。
シルバーウイークの一日くらい、そんな休日があってもいいのではないでしょうか。
「森へ行ったら、何か見つけたり、何か覚えたりしなくちゃもったいないと思っていました。
でも、木の下でただ座っているだけでもいいんですね。
風の音を聞いたり、葉っぱが揺れるのを見たり。
何もしていないのに、だんだん森が見えてくる。
何もしない時間って、空っぽの時間じゃないのかもしれません。」
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