

2025年7月22日
林業の魅力シリーズ 第279弾
森づくりは人生づくり-
本多静六が遺した林学と生き方の教え
2025年7月22日(火)。
本日は火曜日恒例「偉人シリーズ」-
森・自然・林業・建築に貢献した人物の
生涯と功績を掘り下げる日です。
第279弾の今回は、日本林学の礎を築いた男、
本多静六(ほんだ せいろく)を取り上げます。
誰もが知らない「林学者の巨人」
本多静六(1866–1952)は、日本の近代林業と都市緑化を
支えた林学の父とも呼ばれる人物です。
東京農林学校(現・東京大学農学部)で林学を教え、
その後、明治神宮の森や日比谷公園など、
日本の都市林業・造園の礎を築きました。
明治神宮の森は「100年計画」
本多静六の代表的な業績のひとつが、
東京・代々木に広がる明治神宮の森の設計です。
人工林でありながら、“100年後に天然林に戻る”ことを前提に設計
杉・檜・クスノキなどの広葉樹と針葉樹を時間差で植え分けることで、
生態的な遷移を人工的にコントロール
現在、その森はほぼ彼の計画通りに“人が手を離れても持続する森”
へと変化しつつあります
これこそが、林学と哲学が融合した森づくりでした。
「貧乏は発明の母」-節約と蓄財の人生哲学
本多は、林業・造園の専門家であると同時に、
倹約・貯金・投資の思想家としても多くの著作を残しています。
彼の有名な言葉に、こういうものがあります:
「収入の4分の1を貯金せよ。3分の1で慎ましく暮らせ。
残りで学び、人のために使え。」
彼は実際にそれを実行し、教員時代から地道な投資と節約で
巨額の資産を形成し、晩年にはその多くを国や大学に
寄付しています。
つまり、森を育てるように、
お金も人生も育てた人物だったのです。
林業とは「自然との共同事業」である
本多は、林業を「伐って終わりの事業」とは見なさず、
自然と協力しながら長期にわたって人と社会に貢献する仕事と
定義していました。
森林は「育てる・使う・残す」の循環が大事
公共空間としての森、都市の中の緑地の必要性
森林行政と造園計画の両立
このような考えは、現代の森林多機能管理の思想と
ほぼ一致しています。
森を育て、人を育て、未来を育てた人
本多静六の仕事は、森にとどまりませんでした。
彼が植えたのは木だけでなく、思想と希望と、
人の生き方そのものだったのです。
林業が危機にある今こそ、
「100年後を見つめて木を植える」
本多の姿勢を、あらためて胸に刻みたいと思います。
※フォレストカレッジホームページ
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