2025年8月12日
林業の魅力シリーズ第293弾
クヌギー林業と昆虫、
里山文化を支える多用途の広葉樹
本日は、日本の里山を代表する広葉樹、
クヌギ(Quercus acutissima)を取り上げます。
夏の終わりにはまだ緑のドングリが枝先に揺れ、
樹液にはカブトムシやクワガタが群がる・・
そんな情景は、里山の夏を象徴する風景です。
1. クヌギの特徴と分布
ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。
樹高15〜20mに達し、幹は太くまっすぐ伸びる。
日本の本州、四国、九州に広く分布し、特に里山や二次林に多い。
大きく波打つ鋸歯状の葉が特徴で、夏の濃い緑は林内を涼しく保つ。
2. 材としての利用価値
炭焼き用材:クヌギ炭は火持ちが良く、
かつては備長炭に並び称された。
特に茶道用やうなぎの蒲焼き用に重宝。
シイタケ原木:クヌギは菌のまわりが良く、
コナラと並びシイタケ栽培の原木の代表格。
建築・家具材:硬く耐久性があるが、重く加工がやや難しいため、
柱や床材など一部用途に限定される。
3. 生態系での役割
樹液は多様な昆虫を呼び寄せる。
カブトムシ、クワガタムシ、オオムラサキなど、
子どもたちの夏の思い出に直結。
秋にはドングリが野生動物の重要な食糧源となる。
シカ、イノシシ、リス、カケスなどが採食。
深く広がる根系は土壌の保水・浸食防止にも寄与。
4. 里山文化との関わり
かつての里山では、クヌギは計画的に伐採・萌芽更新され、
炭や薪、シイタケ原木として循環利用されてきました。
この“伐ってもまた萌芽する”性質は、
持続可能な森林利用の原点ともいえます。
現代でも一部地域では炭焼き文化が続き、
クヌギ林が観光や教育の場にもなっています。
クヌギは、林業資源としての価値と、
生態系・文化の両面で欠かせない存在です。
夏の樹液に群がる昆虫たちから、秋のドングリ、冬の炭焼きまで、
一年を通じて人と自然をつなぐ“里山の柱”ともいえるでしょう。
※フォレストカレッジホームページ
※X