

2025年9月26日
林業の魅力シリーズ第324弾
『森へ』──星野道夫が伝える、森の命と時間の記憶
森を歩くとき、私たちは「風景」を見ているようで、
実は「時間」を見ているのかもしれません。
本日ご紹介するのは、
アラスカに魅せられた写真家・文筆家、星野道夫さんの
絵本エッセイ『森へ』(たくさんのふしぎ傑作集)です。
子どもから大人まで読める短い作品ながら、
そこには深く静かな森の時間と、
命のつながりが詩のように綴られています。
林業に携わる私たちにとっても、「森と人との関係性」を
改めて見つめ直す機会を与えてくれる一冊です。
星野道夫という人
星野さんはアラスカに住みながら、カリブーやグリズリー、
イヌイットの暮らしなどを長年にわたり撮影・記録してきた人物です。
その文体は決して難解ではなく、
誰の心にもそっと語りかけるような柔らかさを持っています。
『森へ』では、「森」という言葉が単なる風景ではなく、
“いのちの集まり”や“時間の流れ”そのものとして描かれていきます。
「森は一本の木からはじまる」
この本の冒頭では、子どもに向けてこう語りかけます:
「森は一本の木からはじまる。
そして一本の木は、一粒の種からはじまるんだよ」
この言葉には、林業に従事する者として心打たれるものがあります。
私たちが日々見ている木々もまた、誰かが植えた種から始まり、
幾年もかけて育ち、今ここに立っている。
森は常に“つながっている存在”であり、
目の前の木も過去の人々と未来の命をつなぐ架け橋なのだと気づかされます。
彩ちゃんの感想
「森って、“木がたくさんある場所”って思ってました。
でも、星野さんの話を読んで、
森が“命の集まり”って感じられるようになってきました」
「校長、私も将来“森と人が共にいる時間”をつなげる人になりたいです」
星野道夫さんの世界は、
彩ちゃんのような若い世代にこそ、届けたい“森の哲学”でもあります。
林業と“森の哲学”
この本に出てくるような「森の静けさ」や「命の循環」を肌で感じることは、
チェーンソーや林業機械を扱う私たちにとって、
技術や知識と同じくらい大切な感覚かもしれません。
星野さんの語る“森”は、伐って育てるという循環だけでは捉えきれない、
もっと深く、心の奥に届くような存在として、そっと読者の肩をたたいてきます。
『森へ』は、静かに、でも確かに、
「森とは何か」「命とは何か」を問いかけてくる本です。
林業という現場にいるからこそ、
こうした本が心に響く瞬間があります。
時には森の中で足を止めて、風の音や木漏れ日から
“時間の重なり”を感じてみてください。
それが、星野道夫さんが伝えたかった
“森と生きるということ”の原点かもしれません。
note連載中!
彩ちゃんの安全物語 第3話|目立ての奥深さに目覚める
チェーンソー整備と安全性の深い関係。彩ちゃんの奮闘記はこちらから
https://note.com/forestcollege/n/n4a672cec9d08
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