

2025年7月23日
林業の魅力シリーズ 第280弾
手斧が刻む木の呼吸-
チョウナ仕上げに宿る日本の美意識
本日は、水曜日恒例「伝統技術・知恵の日」。
第280弾を迎える本日は、
木の肌に刻まれた“波”のような模様-
「チョウナ仕上げ」に注目してみたいと思います。
最近、木工・建築の世界で再評価されているこの技法。
その背景には、
日本人と木の長い付き合いの歴史があります。
チョウナとは?
チョウナ(釿・手斧)は、古くから大工・木工・杣人が
使ってきた手道具。
主に丸太や製材した木材の表面を仕上げたり、
整形したりするために使われます。
特徴は、湾曲した刃と、横方向に削る動き。
斧や鉋(かんな)とは異なり、
叩く・削る・整えるという動作が一体化しているため、
“木と人が呼吸を合わせるような作業”とも言われます。
チョウナ仕上げの魅力①:「痕跡の美」
機械で削れば、木の表面は滑らかになります。
しかし、チョウナで削った木は、
表面に波打つような独特の模様が残ります。
この模様は「仕上げの傷」ではなく、
手仕事の痕跡=価値として今、見直されています。
一打一打、リズムと加減で変わる模様
同じ木でも、同じ模様は二度と生まれない
木の繊維を断ち切らずに整えることで強度や耐久性も上がる
チョウナ仕上げの魅力②:機能性もある
見た目の美しさだけではなく、
チョウナ仕上げには実用的な意味もあります。
木の表面に凹凸ができることで、接着剤の食いつきがよくなる
塗料や油を塗ったとき、風合いと吸収が均等になる
微細な凹凸が空気の層をつくり、湿気・乾燥に強くなる
これらは、古民家の柱や梁、神社仏閣の構造材にも
見られる特徴です。
今、なぜ「チョウナ」が再評価されているのか?
無垢材や自然素材が見直される中、
“素材を活かす仕上げ”が注目されている
量産ではなく一点ものの価値が求められる時代にマッチ
木工や大工の若手職人の間で「道具の技」として
技術継承の機運が高まっている
また、触れる・見上げる・撫でるなど、五感で木に触れる感覚が
チョウナ仕上げの木にはあると感じる人も多いようです。
「刻む」ことは、素材への敬意
木の肌を滑らかにするのではなく、あえて波立たせる。
それは、「素材を制御する」のではなく、
「素材と呼吸を合わせる」という
日本人の木との向き合い方そのものかもしれません。
チョウナ仕上げは、
“手仕事の痕跡”を価値とする伝統。
それは、これからの林業・木工・建築が進むべき未来にも
つながる美学です。
※フォレストカレッジホームページ
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