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森の仕事人日記

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講師は、実演する前に「どこから見せるか」を考えている|伝わる林業研修の見せ方

2026年9月8日

森の仕事人日記 第10回

講師は、実演する前に「どこから見せるか」を考えている

 

 

はじめに

林業研修では、講師が実際にやって見せる場面がたくさんあります。

チェーンソー。

刈払機。

測量器械。

道具の点検。

作業姿勢。

言葉だけで説明するより、実際の動きを見てもらった方が分かりやすいことがあります。

でも、ただ正しく実演すれば伝わるかというと、そうではありません。

講師からは完璧に見えていても、研修生からは、

「肝心なところが見えなかった」

ということがあります。

だから私は、実演する前に考えます。

「今日は、どこから見てもらうか。」

 



 


見せたいものによって、立つ場所は変わる

例えば、手の位置を見せたい時。

講師の正面に立ってもらうのが一番見やすいとは限りません。

体に隠れてしまうことがあります。

足の位置を見せたいなら、もっと少し横から見てもらった方が分かりやすいかもしれません。

道具全体の動きを見せたいなら、少し距離を取った方がいい。

つまり、

何を見せるかによって、見る位置は変わります。

講師が立つ場所だけでなく、研修生が立つ場所までが実演の一部です。

 


「見えているはず」は危ない

教える側は、自分がやっていることを全部分かっています。

だから、

「これなら見えるだろう」

と思いがちです。

でも研修生は違います。

初めて見る動きなら、どこを見ればいいかさえ分かりません。

講師は手元を見てほしいと思っていても、研修生はチェーンソー全体を見ているかもしれない。

足元を説明しているのに、顔を見ているかもしれない。

そこで、

「今から左手の位置を見てください」

「今回は足の位置だけを見てください」

と、見る場所を先に伝えることも大切です。

 


一度に全部見せようとしない

実演では、伝えたいことがたくさんあります。

姿勢。

手。

足。

道具。

視線。

動き。

安全確認。

全部大切です。

でも、一度の実演ですべて見てもらおうとすると、かえって何も残らないことがあります。

だから、

一回目は全体を見る。

二回目は手元を見る。

三回目は足元を見る。

というように、分けて見せることもあります。

教える側が情報を減らすことで、相手には伝わりやすくなる。

これは実演でも同じです。

 


研修生を近づけすぎない

見せたいからといって、近ければいいわけではありません。

特に機械を扱う実演では、安全距離を確保することが最優先です。

「よく見える位置」と「安全な位置」は、両方を満たさなければなりません。

必要なら機械を止めてから近くで説明する。

動かす時は離れてもらう。

その使い分けをします。

見せるために安全を崩してはいけません。

講師にとっては、ここも大事な判断です。

 


見せる方向を変えるだけで伝わることがある

説明が伝わらない時、言葉を増やしたくなります。

でも、実は説明ではなく角度の問題だった、ということがあります。

「反対側から見てみて」

「今度は横から見て」

それだけで、

「ああ、そういうことか」

となることがあります。

人は立体的な動きを、一方向からすべて理解するのは難しいものです。

だから講師自身が向きを変える。

研修生に位置を変えてもらう。

見え方を変えることも、教え方の一つです。

 


研修生の表情を見る

実演していると、どうしても自分の動きへ集中します。

でも途中で研修生を見ることも大切です。

見えているか。

理解できていそうか。

後ろの人まで見えているか。

首を伸ばして見ている人はいないか。

もし見えにくそうなら、その場で位置を変えます。

「分かった?」

と聞くだけではなく、

見えているかをこちらから確認する。

これも講師の仕事です。

 


実演のうまさと、教えるうまさは同じではない

作業が上手な人は、きれいな動きを見せられます。

でも、それだけで教えるのが上手とは限りません。

自分では自然にできてしまうことほど、初心者には見えにくいからです。

どこが大切なのか。

どこで止めるのか。

どの角度から見れば分かるのか。

何を一つだけ覚えて帰ってほしいのか。

そこまで考えて初めて、

「できる技術」が「教えられる技術」に変わる

のだと思います。

 


第7回の反省も、ここにつながる

第7回では、

「今日はうまく教えられなかった」

と思う日があるという話を書きました。

その原因は、説明の言葉だけとは限りません。

もしかしたら、見せ方が悪かった。

人が重なって見えなかった。

一度に多くを見せすぎた。

そんなこともあります。

だから一日の終わりに、

「次はどこから見せよう」

と考える。

そうやって、次の実演が少しずつ変わっていきます。

 


おわりに

林業研修の実演では、

正しい動きをすること。

安全に行うこと。

もちろん、それが基本です。

でも教える立場なら、もう一歩考えます。

何を見せたいのか。

どこから見てもらうのか。

どのくらい離れてもらうのか。

一度に何を伝えるのか。

講師は、実演する前に「どこから見せるか」を考えている。

技術を持っているだけでは、人には伝わりません。

相手からどう見えているかを考える。

それも、人を育てる現場で磨いていく大切な技術だと思っています。

 


彩ちゃんのひとこと

「正しい実演なら、どこから見ても分かると思っていました。

でも、手を見せたい時と足元を見せたい時では、見る場所も違うんですね。

何を教えるかだけでなく、
相手からどう見えているかまで考える。

それが“できる人”から“教えられる人”になるための技術なんだと思いました。」

 

 

 

 


note更新のお知らせ(9月2日更新)

彩ちゃんの安全物語51話

『その水分、喉が渇いてから飲んでいないか?』

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