

2025年8月14日
林業の魅力シリーズ第295弾
野生動物と林業-共に生きる境界線をどう描くか
獣害と共存の狭間で
本日は木曜日。テーマ自由のフリートークとして、
林業における野生動物との共存について考えてみたいと思います。
シカやイノシシ、サルといった野生動物は、森の一部でありながら、
林業現場ではしばしば「獣害」として語られます。
人と獣の境界線は、どう描けばいいのでしょうか?
1. シカが育ち、木が消える森
日本各地で問題になっているのが、シカやイノシシによる若木の食害や樹皮剥ぎです。
間伐などで森に光が入ると、草本植物が豊かに育ち、シカが集まってきます。
やがて食べ尽くされ、樹皮も剥がれ、若木は枯れて更新できない・・
そんな“静かな森林崩壊”が各地で進行しています。
2. 獣害対策-技術と知恵の積み重ね
林業現場では様々な対策技術が導入されています。
防護柵(ネット・金網)や電気柵の設置
忌避剤の使用(においや味で動物を避けさせる)
地域一体型の狩猟や間引き(管理捕獲)
野生動物の行動パターンの解析とデータ化
一方で、かつての杣人や山人たちは、山の“けもの道”を読み、
植える場所や時期をずらすといった知恵で対処してきました。
3. “敵”ではなく“生態系の一部”として見る
野生動物は森の中で果たす役割もあります。
種子を運ぶ(糞や体毛に付着)
弱った個体や病害樹を食べて間引く
森の変化を“指標”として知らせてくれる存在
つまり、過剰な対立ではなく、
“一定の距離を保つ関係”を築くことが必要なのです。
4. 林業と獣の「やさしい境界線」
大切なのは、「どこまでが人の手で、どこからが獣の世界か」を
知識と感性で見極める力です。
木のねじれを感じ取るように、森が発するサインに耳を傾けていると、
野生動物とのちょうどよい距離も見えてくる気がします。
獣害に苦しむ声を聞きつつも、共に山を分かち合う覚悟と技術が、
これからの林業には必要でしょう。
野生動物と林業は、切っても切り離せない関係です。
森は人間だけのものではなく、すべての命が共に生きる場。
だからこそ、“共存”という言葉の中に、
技術と敬意と知恵を込めていきたい。
それが、これからの林業が描くべき“やさしい境界線”だと、
私は思うのです。
※フォレストカレッジホームページ
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