

2026年2月10日
火曜日は「偉人」の日。
だから今日は、
林業の偉人の話を書こうと思います。
ただし。
歴史に名を残した人ではありません。
本も出していないし、
表彰もされていない。
世の中の誰も知らない。
でも私にとっては、
間違いなく いちばんの偉人 だった人の話です。
まだ薄暗い朝。
軽トラで山に着くと、
もうその人はいました。
エンジンは止まっていて、
ただ森を見ている。
作業を始めるわけでもなく、
急ぐ様子もない。
ただ立って、森を眺めている。
最初は不思議でした。
「何をしているんだろう」と。
でも、あとで分かったんです。
あの時間が、その人の“仕事”だった。
森の空気を読む。
風の向きを見る。
土の湿り気を感じる。
伐る前に、全部を観察していた。
だからその人の現場は、
いつも静かで、事故がなかった。
チェーンソーの腕前なら、
もっと速い人もいました。
力が強い人もいた。
でも。
なぜか皆、その人の近くに集まる。
理由は単純でした。
一緒にいると、安心できる。
焦らない。
怒らない。
無理をしない。
必ず最後に全員を見る。
技術より前に、
「人としての構え」ができていた。
今思えば、
あれが本当のプロだったんだ と気づきます。
ある日、私が焦っていたとき。
段取りが崩れて、
早く終わらせたくて、
気持ちが前のめりになっていた。
そのとき、その人が言いました。
「森は急がないよ」
たったそれだけ。
説教でも理屈でもない。
でも、その一言でハッとしました。
そうだ。
急いでいるのは自分だけだ。
森は、いつも同じリズムで呼吸している。
林業は、そのリズムに合わせる仕事なんだ。
あの言葉は、
今でも私の中に残っています。
その人の名前を知っているのは、
きっと数人だけでしょう。
歴史にも残らない。
でも。
私の中では、
どんな偉人よりも大きな存在です。
林業の偉人は、
教科書に載らない。
森の中にいる。
今日もどこかで、
静かに森を見ている人がいる。
そして私は思います。
林業は、こういう人に支えられてきた仕事なんだ。
たぶん、これからも。
note更新のお知らせ(2月4日更新)
彩ちゃんの安全物語 第22話が公開されました。
『止めたあと、どうする?』
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