

2025年7月16日
林業の魅力シリーズ 第275弾
「木の皮を活かす知恵」-
樹皮利用の伝統と現代の再評価
本日2025年7月16日(水)は、
「林業の魅力シリーズ」伝統の日。
このシリーズは、今月より埼玉県林業技術者育成研修から
独立し、より自由な発想で林業や森にまつわる話題を
発信してまいります。
本日は、“木の皮”に注目。
枝葉や材が主役になりがちな中で、
忘れられた「皮」の知恵を紐解きます。
樹皮(じゅひ)は「木の衣」-だが、ただのゴミではない
森林整備や製材の現場で出る副産物のひとつが、樹皮(バーク)。
現代では、粉砕されて堆肥やバークチップとして使われることが
多く、ときにはただの廃棄物扱いされることもあります。
しかし、かつての人々は、この「皮」に命を支える価値を
見出していました。
日本の伝統:皮を削り、編み、織る
① シナノキ(榀・科)の樹皮=「シナ布」
東北地方では、シナノキの内皮(靱皮)を煮て繊維にし、
布を織る文化が残っています。
この「シナ布」は、縄文時代から続くとされる最古の
繊維技術のひとつ。
江戸時代には、越後・会津・津軽で農家の作業着や蚊帳布に
用いられました。
② ヒノキ・スギの皮=屋根材や壁材に
木曽や吉野などでは、樹齢100年以上のスギやヒノキの皮を剥ぎ、
手入れされた「皮屋根」や「皮張り壁」に活用。
高い防水性と耐久性をもち、しかも樹木を枯らさず剥ぐ技術が
伝承されてきました。
③ クルミ・カツラなど=器や籠の素材
柔らかい内皮は、曲げ加工しやすく器や弁当箱の素材として
使われてきました。
特に北海道では、アイヌ民族が樹皮を衣服や小物に加工し、
生活の一部としていた例も。
「皮を剥ぐ」=「殺す」ではない知恵
近年、「木の皮を剥ぐ=木を殺す」という印象を持つ人も
増えましたが、伝統的な技術では、木を生かしたまま皮を
部分的に活用する知恵がありました。
春先の樹液が多い時期に、
年輪や導管を傷つけずに外皮のみ剥ぐ技術
数年ごとに同じ木から少しずつ皮を剥ぎ、
木を育てながら資源を得る知恵
これはまさに、持続可能な資源利用そのものでした。
現代林業へのヒント:廃棄から価値へ
今、「バーク材」の価値を見直す動きが静かに始まっています。
ヒノキ皮を活かした天然染料・精油・消臭シート
スギの皮を練りこんだ抗菌性のある壁紙素材
樹皮繊維を使ったサステナブルなファブリック製品
いずれも、「木のすべてを使い切る」という発想から
生まれたものです。
皮を活かすのは、木を敬うこと
「皮」は、木にとっての命を守る衣。
それを粗末にせず、工夫と知恵で活かしてきた昔の人々は、
自然に対して奪うのではなく“借りる”という感覚を
持っていたのかもしれません。
私たちが林業や木工に関わるうえで、
このような「使い切る知恵」を再発見し、
現代の技術と結びつけることが、
本当の意味でのサステナブルな社会への
第一歩になるのではないでしょうか。
※フォレストカレッジホームページ
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