

2025年7月15日
林業の魅力シリーズ 第274弾
「持続可能な林業」を世界に示した男-
ゲオルク・ルートヴィヒ・ハルトィッヒ
2025年7月15日、火曜日。
本シリーズは、これまで埼玉県林業技術者育成研修の
一環として発信してまいりましたが、
今回より独立したブログ記事企画としてスタートしております。
林業・自然・建築・文化に深く関わる偉人たちの
足跡をたどりながら、未来を考える火曜日の
「偉人シリーズ」、本日もお届けします。
森を守るために、計算せよ。
今でこそ当たり前になった
「持続可能な林業(サステナブルフォレストリー)」。
しかし、これを世界で初めて体系的に提唱した人物を
ご存じでしょうか?
彼の名は・・
ゲオルク・ルートヴィヒ・ハルトィッヒ
(Georg Ludwig Hartig)(1764–1837)
ドイツの林学者であり、
“持続可能性”という思想を林業の中核に据えたパイオニアです。
ナッハハルティヒカイト-永続性という革命
ハルトィッヒが用いたドイツ語
「Nachhaltigkeit(ナッハハルティヒカイト)」は、
「将来にわたって継続できるように使うこと」を意味します。
この言葉を林業に当てはめたとき、
彼が伝えたかったのはこういうことです:
「森から得る利益は、その再生可能な範囲にとどめよ。
一世代ではなく、未来の世代の分も考えて管理せよ。」
当時のヨーロッパでは、
木材の乱伐による資源枯渇が深刻化していました。
ハルトィッヒはこの問題に警鐘を鳴らし、
収穫量と成長量を数値で管理するという新しい林業の
概念を打ち立てたのです。
教育と制度で「持続」を根付かせた
ハルトィッヒの功績は理念だけではありません。
彼は1806年にプロイセン政府の林業顧問となり、
官林の制度改革を実行。
また、林業学校の設立に尽力し、
教育による林業技術の普及に力を入れました。
自著『森林経営の原理』は、
のちにヨーロッパ中の林業教科書として活用されます。
これらの取り組みは、ドイツのみならず、
オーストリア・スイス・日本などへも広く影響を与えました。
ハルトィッヒの思想、日本へ
明治時代、日本政府はドイツの林学を積極的に導入しました。
東京山林学校(のちの東京農業大学)では、
ドイツ人教師エンゲルベルト・ケンペルや
その後継がハルトィッヒの考えを土台に教鞭を取りました。
その結果、日本でも「植える→育てる→収穫する→また植える」
という循環型林業の概念が根付き、とくに埼玉県を含む
関東山地の官林整備に大きな影響を与えたのです。
現代のSDGsの原点は、19世紀の森にあった
持続可能性(Sustainability)という言葉は、
SDGs(持続可能な開発目標)で一躍注目されましたが、
その思想の原点はまさに、ハルトィッヒの林業哲学にあります。
経済、環境、社会のバランスをとりながら資源を使う。
これは林業だけでなく、
あらゆる分野に通じる“未来への責任”と言えるでしょう。
木は育ち、思想は根を張る
200年以上前に語られた「森を未来に残す」という哲学。
それは今も、私たちの仕事、教育、
そして暮らしの中に生きています。
ハルトィッヒが見た森の未来を、
今度は私たちが、次の世代へと手渡していく番です。
※フォレストカレッジホームページ
※X