2025年8月13日
林業の魅力シリーズ第294弾
柿渋と木材-
塗るだけじゃない“生かす”技術と林業の知恵
本日、取り上げるのは、「柿渋(かきしぶ)」です。
渋柿を発酵させたこの天然の液体は、
古来より日本人の暮らしと深く関わり、
木材を“塗る”だけでなく、
“生かす”技術として受け継がれてきました。
現代の林業でも、化学物質に頼らない塗装・保護の
選択肢として再び注目されています。
1. 柿渋とは何か?
柿渋とは、未熟な渋柿を絞って
発酵・熟成させた天然の液体です。
主成分はタンニンで、
強力な防腐・防水・防虫効果があります。
古くは平安時代から用いられ、
江戸時代には「万能塗料」として重宝されました。
2. 木材との相性-“塗る”から“活かす”へ
柿渋は以下のような木材用途で活躍してきました:
和傘・和箪笥・建具への塗布(色味と防水性を与える)
木造建築の柱・板壁への塗装(耐候性・抗菌性を高める)
舟材や桶・酒樽などの水回り製品の防水処理
紙袋や布製品(柿渋染)への応用もあり、多用途性が高い
見た目も深みのある飴色やこげ茶に変化し、
年月とともに風合いが増していくのも特徴です。
3. 林業における価値-自然素材と共に生きる知恵
林業において柿渋の価値は、単なる塗料ではなく
“自然の循環の中で木を守る”という哲学にあります。
防腐剤や防虫剤として、化学薬品の代替になり得る
製材後の板材・構造材の保護に使える
シイタケ原木の伐採跡処理としての実験例も一部で見られる
スローライフ・自然建築志向の高まりにより再注目されている
当社の掲げる「合板を使わない健康ログハウス」や
「無垢材との共存」にもピッタリの思想です。
4. 今こそ見直したい「日本の塗料文化」
現代は合成塗料や防腐剤が主流ですが、
その副作用や環境への負荷も問題視されています。
柿渋は人にも森にも優しい循環型技術として、
林業の未来において再評価されるべき存在です。
また、渋柿の植樹や地産地消的な発酵技術も、
地域林業の活性化に寄与する可能性を秘めています。
柿渋は「塗る」だけではありません。
「守る」「育む」「魅せる」ための知恵です。
伝統技術を見直すことは、
林業の未来を自然と調和させる第一歩。
木材と人、そして森をつなぐ“渋い名脇役”の力に、
もう一度注目してみませんか?
※フォレストカレッジホームページ
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