

2025年7月25日
林業の魅力シリーズ 第282弾
「森・木・建築」は分けてはならない-
『森と木と建築の日本史』が教える本質
週末にじっくり読みたい一冊を紹介する「本の日」。
第282弾は、日本における森と木の文化を、
建築の視点から読み解いた名著をご紹介します。
本日の推薦書籍
『森と木と建築の日本史』
著:海野 聡(うんの さとし)
岩波新書・新赤版1926(2022年刊)
森と木と建築は「三位一体」である
この本の核心は、「森」「木」「建築」が、
かつての日本社会では分かちがたく結びついていたという事実を、
歴史的に丁寧に辿っていくところにあります。
森は祈りの場であり、木材の供給源であり、神が宿る空間だった
木は資材であると同時に、生きたまま人と共にあった存在
建築は、森を伐ることで得た恩恵を、空間として再構築する行為だった
この三つは決して別々の要素ではなく、
ひとつながりの文化体系だったのです。
神社・寺院建築と森の関係性
特に印象深いのは、神社建築と森林との関係。
社殿だけでなく、周囲の「社叢(しゃそう)」も神聖視されていた
神社の森は「使うための木」ではなく、「共に生きる木」だった
しかしそれでも必要なときには伐る──そしてまた植える
つまり、祀り・伐り・育てることは一体化していた
この視点は、林業に携わる者としても強く共感できる内容です。
日本建築は「伐ることで森とつながる文化」
本書では、木を「伐らないこと」=保護ではなく、
「どう伐り、どう活かすか」という視点が貫かれています。
木は伐ってこそ人の暮らしに根ざす
家一軒建てることで、何十年、何百年の森の命が家族と共に生きる
その責任を忘れず、木と向き合うことが本来の建築の姿
この思想は、当社フォレストカレッジの掲げる
「ログハウスは作るのではなく育てる」にも深く通じます。
現代の林業と建築に問う、失われた感覚
海野氏は現代社会への警鐘も鳴らします。
近代以降、森林と建築が分離され、木材は商品=物質へと変化した
「建材としての木」は残っても、
「森林と共にある建築思想」は失われつつある
再び、森と建築を結び直す必要があると語ります
これは、林業の未来を見つめる我々にとって、非常に重い提言です。
「森・木・建築」を再びつなぐ時代へ
『森と木と建築の日本史』は、
木を伐ること、使うこと、祈ること、建てること-
それらすべてが「ひとつの文化」だった時代を静かに
思い出させてくれる本です。
伐ることが破壊ではなく、再生の第一歩であるという感覚。
その本質に立ち返ることこそが、
現代林業と建築が未来へ進む道なのかもしれません。
※フォレストカレッジホームページ
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