

2026年6月5日
5月30日・31日の2日間、神奈川県葉山町にて、一般社団法人葉山の森保全センター様主催のチェーンソー特別教育に出張講習として伺いました。今回の受講者は、男子26名・女子2名の計28名です。
葉山での講習といえば、前回2月に開催したときのことを思い出します。
葉山ではほとんど降らないという雪の中で行ったチェーンソー特別教育。寒さと雪に包まれたあの講習は、今でも忘れられない良い思い出です。
そして今回は一転、汗ばむくらいの良い天気。
学科も実技も、葉山らしい明るい空気の中で、和気あいあいと進みました。
ただし、雰囲気は和やかでも、伝える内容は真剣そのものです。
チェーンソーは便利な道具である一方、使い方を間違えれば大きな事故につながります。だからこそフォレストカレッジでは、修了証を出すだけでなく、現場で事故を起こさないための考え方と動作を一つひとつ丁寧に伝えています。
今回も、道具の扱い、目立て、燃料、保護衣、エンジン始動、玉切り、枝払い、伐倒まで、細かいところまでしっかりと実践していただきました。

今回の学科は和室で行いました。
椅子と机の教室とは違い、畳の上で距離が近く、参加者の表情がよく見えます。
不思議なもので、和室には少し場を和ませる力があります。
けれど、内容はしっかり安全教育。チェーンソーの基本構造、危険性、作業時にやってはいけないことを確認しながら、実技に入る前の土台をつくりました。
安全は、現場に出てから慌てて覚えるものではありません。
まず頭で理解し、次に体で覚える。
その第一歩が学科です。

今回のお宿は、まるで昭和に迷い込んだような味わいのある場所でした。
車いすということで、1階に外玄関のある部屋を用意していただき、本当に助かりました。
「みなと湯」という銭湯もあり、講習後の疲れをゆっくり癒すことができました。
出張講習は、講習そのものだけでなく、こうした土地の空気や人の心遣いも記憶に残ります。
雪の葉山、晴れの葉山、そして昭和の香りが残る宿。
これもまた、葉山講習の大切な一コマです。

実技会場は、和室での学科とはまた違った景色。
横須賀方面を一望できる山の上で行いました。
天気にも恵まれ、葉山の森の空気を感じながらの実技講習です。
ただし、景色が良いからといって気を抜くわけにはいきません。
チェーンソー作業は、足場、周囲確認、退避方向、道具の状態、すべてが安全に関わります。
自然の中で学ぶからこそ、現場に近い感覚で安全を確認できます。

実技は、チェーンソーの取付方と目立てから始めました。
参加者の皆さんの関心が非常に高く、教える側にも自然と熱が入ります。
ソーチェーンの取り付けは、基本中の基本です。
しかし、この基本が曖昧なまま作業している人も少なくありません。
向き、張り、確認。
小さなミスが大きな事故につながるのがチェーンソーです。
そして目立て。
切れないチェーンソーは、力を入れなければ切れません。
力を入れるから姿勢が崩れ、姿勢が崩れるから事故につながります。
つまり、目立ては単なる整備ではなく、安全作業そのものなのです。

混合燃料の入れ方も丁寧に確認しました。
「燃料を入れるだけ」と思われがちですが、ここにも安全の基本があります。
給油の場所、こぼした場合の対応、キャップの締め方、始動前の確認。
出張講習でも、こうした細かいところを省略しません。
なぜなら、現場の事故は大きな作業だけで起きるとは限らないからです。
何気ない動作の中にこそ、危険の芽があります。

下肢の切創防止用保護衣の着用を徹底しました。
これは命を守る大切な装備です。
安全衛生規則の改正により、チェーンソー作業では下肢切創防止用保護衣の着用が求められています。
しかし現場では、まだ十分に徹底されていないことがあります。
「知っている」と「着用している」は違います。
そして「持っている」と「正しく使っている」も違います。
フォレストカレッジでは、保護衣についてもただ説明するだけでなく、なぜ必要なのか、どこを守るのか、どのように着用するのかまで伝えます。

正しいエンジン始動法を学びました。
エンジンをかけるだけの動作と思われがちですが、ここにも事故の危険があります。
不安定な姿勢でかける。
チェーンの動きを確認しない。
周囲確認をしない。
こうした小さな油断が、事故につながります。
正しいエンジン始動法は、安全作業の入口です。
入口が乱れれば、その後の作業も乱れます。
だからこそ、最初の一動作を大切にします。

初めてチェーンソーを扱う方にも、手取り足取り丁寧に指導しました。
フォレストカレッジのチェーンソー特別教育が選ばれる理由の一つは、
初心者でも安心して受講できることです。
初めての人にとって、チェーンソーは怖くて当然です。
その怖さは悪いものではありません。むしろ、安全を学ぶうえで大切な感覚です。
怖さを無理に消すのではなく、正しい知識と正しい動作で、少しずつ扱えるようにしていく。
それが本当の実践教育です。

玉切りでは、アクセルワークを重点的に学びました。
チェーンソーは力で押し込む道具ではありません。
刃の切れ味、チェーンソーの重さ、アクセルの使い方、姿勢。
これらがそろって、初めて安全で無理のない切断になります。
アクセルワークを覚えることは、チェーンソー上達の近道です。
そして同時に、事故を減らす近道でもあります。

チェーンソーが挟まれない橋状材の切り方。
丸太を裂けさせない片持ち材の切り方。
これは現場で非常に大切な技術です。
木はただ置かれているだけではありません。
重さがあり、張力があり、切った瞬間に動きます。
その動きを読めないと、ガイドバーを挟まれたり、材が裂けたりします。
事故や道具の破損にもつながります。
今回は事故軽減のため、私も車いすから立ち上がり指導しました。
どうしても伝えたい場面では、体が先に動きます。
安全教育は、机の上だけでは終わりません。

枝払いは、やってはいけないことが多い作業です。
簡単そうに見えて、実は事故が起きやすい工程でもあります。
立ち位置、バーの向き、足元、刃の当て方。
一つ間違えば、キックバックや転倒につながります。
だからこそ、枝払いでは基本の型が重要です。
正しい枝払いの仕方は、事故を減らします。
「速くやる」よりも、「危険を作らない」。
ここを徹底して伝えました。

通常伐倒のデモンストレーションでは、1から10まで伐倒の手順を見てもらいました。
伐倒は、木を切る前にほとんど勝負が決まります。
倒す方向、周囲確認、退避場所、受け口、追い口、ツル。
どれか一つが曖昧でも危険です。
デモンストレーションでは、単に成功例を見せるだけではありません。
人がミスをしやすい注意点をあえて言葉にしながら進めます。
「ここで焦る」
「ここで見落とす」
「ここで自己流が出る」
そうした現場の落とし穴まで伝えるのが、フォレストカレッジの講習です。

オープンフェイス伐倒法のデモンストレーションも行いました。
ビギナーにとって、通常伐倒だけでは理解しづらい部分もあります。
オープンフェイス伐倒法は、受け口が大きく、倒れる動きが見えやすいため、初心者にも理解しやすい伐倒法です。
もちろん、どの方法にも特性があります。
大切なのは、方法を丸暗記することではなく、なぜその切り方をするのかを理解することです。
通常伐倒とオープンフェイス伐倒。
両方を見ることで、伐倒の考え方がより立体的になります。

修了証授与。
2日間、しっかり学んだ証です。
ただし、修了証はゴールではありません。
ここからが本当のスタートです。
大切なのは、講習で繰り返し伝えた
「やってはいけないことをやらない」
ということ。
現場では、慣れや焦りが出ます。
そのときに今回の講習を思い出してほしい。
安全は、特別な日のためではなく、毎日の作業のためにあります。

集合写真。
学科も実技も、本当に楽しい2日間でした。
参加者の皆さんの表情からも、充実した講習だったことが伝わってきます。
安全のお土産もしっかり持ち帰ることができたと思います。
ご参加いただいた皆さま、
そして主催してくださった一般社団法人葉山の森保全センター様、
本当にありがとうございました。
前回の葉山は雪。
今回は汗ばむほどの晴天。
同じ葉山でも、まったく違う表情の中でチェーンソー特別教育を行うことができました。
でも、変わらないものがあります。
それは、参加者の皆さんの真剣さと、森を守りたいという思いです。
チェーンソーは、ただ木を切る道具ではありません。
森を整え、人を守り、地域を支えるための道具です。
だからこそ、正しい知識と正しい技術が必要です。
今回の講習で学んだことが、これからの葉山の森づくりに少しでも役立てば、講師としてこれ以上うれしいことはありません。
皆さん、2日間本当にお疲れさまでした。
安全をお土産に、これからも森と向き合っていきましょう。
※フォレストカレッジホームページ
https://www.young-leaves.com/