

2025年7月29日
林業の魅力シリーズ第284弾
南方熊楠・再考-森を守る思想家の眼差し
「森はただの資源ではない」
そう語るかのように、明治・大正・昭和を駆け抜けた
異才・南方熊楠。
菌類や植物の研究で知られる彼だが、
その本質は“思想家”であり、
“森の守り人”でもあった。
今日は、その思想面に光を当てながら、
熊野の森とともに生きた熊楠のもう一つの顔に
迫ってみたい。
南方熊楠の生涯は、森と人間の共生をめぐる探究の旅だった。
彼が特にこだわったのは、
神社合祀令によって伐採・統合されようとしていた
社叢(しゃそう)=“森の神域”の保全だった。
これは単なる反対運動ではなく、森の中に生きる
微生物・植物・動物・人間をひとつの宇宙とみなし、
その「つながり」を守ろうとした哲学的実践だった。
熊楠の思想は、のちに「南方曼荼羅」として図解される。
そこには、森の循環、菌類の役割、人と自然との
精神的つながりが織り込まれている。
これこそ現代に必要な“森林倫理”ではないだろうか。
熊楠は熊野の地に暮らし、日々フィールドワークを重ねながら、
数千点におよぶ膨大な標本とノートを残した。
その一つひとつが、日本の森林文化の記録であり、
自然観の礎である。
今、「自然を聴く」技術やAIの活用が進む時代においても、
南方熊楠の「森は語る」という思想は、
色あせることなく、むしろ新たな価値を帯びている。
“森を守る”とは何か・・
それを真剣に考えた先人の姿に、今こそ学びたい。
※フォレストカレッジホームページ
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