

2026年9月20日
ログハウスの木の動きを知ると、建てたあとのログハウスの見方が少し変わります。
昨日のvol.124では、なぜログハウスが丸太を積み、角で組んで建てるのかを紹介しました。
今日は、その続きです。
ログハウスの木の動きは、建物が完成したあとも続きます。
丸太をきれいに積み上げ、屋根を掛け、窓や扉を取り付けた。
だからといって、木がその瞬間からまったく変わらなくなるわけではありません。
木は周囲の湿度と水分をやり取りしながら、少しずつ状態を変えていきます。
乾けば縮む。
湿気を含めばわずかに膨らむ。
そして、ときには割れたり、ねじれたりします。
ログハウスでは、こうした木の変化を「起きてはいけないこと」と考えるのではなく、最初から起こるものとして家をつくります。
そこが普通の工業製品とは大きく違うところです。
山で立っていた木を伐採すると、木としての成長は止まります。
しかし、木材になったあとも内部には水分が残っています。
その水分が抜けていくにつれて、木は少しずつ乾燥していきます。
丸太は厚みがあります。
板材のように薄く加工された木材に比べれば、内部まで乾燥するには時間がかかります。
だからログハウスを建てたあとも、丸太の状態は少しずつ変化していきます。
「木は生きている」とよく言いますが、正確には、木材が周囲の温度や湿度に応じて水分を吸ったり放出したりしているのです。
この性質を知らずにログハウスを見ると、
「丸太が縮んだ」
「割れが入った」
「少し動いた」
というだけで、不具合だと思ってしまうかもしれません。
しかし、その多くは木という材料が持つ自然な変化です。
ログハウスの木の動きで、特に重要なのが乾燥による収縮です。
木は乾くと寸法が変わります。
丸太の場合、長さ方向の変化よりも、木の直径方向の変化のほうが大きく現れます。
つまり、長い丸太が急激に短くなるというより、一本一本の丸太の高さが少しずつ小さくなっていくイメージです。
一段だけなら小さな変化です。
しかし、丸太を十段、十五段と積み重ねればどうでしょう。
一本一本のわずかな変化が積み重なって、壁全体では無視できない変化になります。
これが、ログハウスを考えるうえで重要になります。
ログハウスではよく**「セトリング」**という言葉を使います。
簡単にいえば、積み重ねたログ壁が時間とともに沈み込んでいく現象です。
乾燥による丸太の収縮。
丸太同士のなじみ。
自重による締まり。
こうしたものが重なって、壁全体の高さが少しずつ変わっていきます。
ここで大切なのは、
セトリングは突然起こる事故ではない
ということです。
起こることが分かっているからこそ、最初からそれを考えて建てます。
ログハウスは木の動きを止めようとするのではなく、動いても建物に無理がかからないように納める建築なのです。
分かりやすいのが窓や扉です。
ログ壁は少しずつ沈んでいきます。
しかし、窓枠そのものは丸太と同じようには縮みません。
もし丸太壁と窓枠を何も考えず完全に固定してしまったら、ログ壁が下がろうとする力が窓や扉にかかってしまいます。
扉が開きにくくなる。
窓に余計な力がかかる。
壁の動きが止められる。
こうしたことが起こり得ます。
そこでログハウスでは、木が動くことを考えた納まりをつくります。
つまり、建物をつくるときから、
「この木はあとで動く」
という未来まで考えているのです。
これはログハウスの面白いところです。
丸太に大きな割れが入っているログハウスを見て、
「大丈夫なの?」
と思ったことがある人もいるかもしれません。
丸太が乾燥すると、内部と表面では乾く速さが違います。
表面から水分が抜けていく一方で、内部にはまだ水分が残っています。
その乾燥差などによって、丸太に割れが生じることがあります。
これを「チェック」と呼ぶこともあります。
もちろん、どんな割れでも放っておけばよいという意味ではありません。
位置や深さ、雨水の入り方など、確認が必要な場合もあります。
ただし、丸太に割れがある=ログハウスが壊れているという単純な話ではありません。
木の割れもまた、木が自然素材であることを示す一つの表情です。
木は一本として同じものがありません。
昨日の記事でも触れましたが、森で育っているときから、それぞれの木には違いがあります。
年輪の入り方。
枝の付き方。
繊維の流れ。
育った場所。
これらが違えば、乾燥するときの動きも違います。
まっすぐ縮むだけではなく、わずかにねじれる木もあります。
ログビルダーは、丸太をただ積んでいるわけではありません。
木の曲がりや繊維、ねじれの方向などを見ながら、
「この木をどこに使うか」
を考えます。
ログハウスづくりが面白いのは、図面だけですべてが決まらないところでもあります。
目の前にある木を読む。
そこには、人の判断があります。
こうしたログハウスの木の動きを読むことも、丸太を扱ううえで大切な仕事です。
現代の製品は、寸法が変わらないことを求められるものが多いでしょう。
しかしログハウスは少し違います。
木が動くこと自体を完全になくすのではありません。
動く木を使いながら、建物として成立させる。
それがログハウスです。
丸太が乾く。
少し縮む。
割れる。
ねじれる。
壁全体が落ち着いていく。
その変化を読みながら、建物の納まりを考える。
だから、ログハウスの木の動きを理解することは、ログハウスそのものを理解することでもあります。
木を工業製品のように完全に均一なものへ変えるのではなく、木が持っている性質を残したまま家にする。
そこには、森と暮らしをつなぐ一つの考え方があります。
ログハウスは、完成したらすべてが終わる建物ではありません。
丸太は乾燥し、縮み、ときには割れたりねじれたりします。
そして、積み上げたログ壁ではセトリングも起こります。
だからこそログハウスでは、木を無理に止めるのではなく、木が動くことを最初から考えて建てます。
昨日のvol.124で紹介したのが、
**「木を組んで家にする」**話。
今日のvol.125は、
**「その木と建てたあとも付き合っていく」**話です。
ログハウスとは、木を材料として使い切る建物ではなく、木の性質を理解しながら長く付き合っていく建物なのです。
※フォレストカレッジホームページ
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