

2025年9月19日
林業の魅力シリーズ第320弾
『The Forest Brims Over』-森に“なる”という想像力
「森を守る」「森と生きる」──林業の中でよく語られる言葉ですが、
今回ご紹介する小説は、もっと根源的な問いを投げかけてきます。
「もしも自分が森になったら?」
村上春樹や小川洋子とは異なるアプローチで、
人と自然の境界を解体してしまうような想像力-
綾瀬マル(Maru Ayase)著
『The Forest Brims Over』をご紹介します。
あらすじと世界観
主人公のルイ(Rui)は、夫の小説の“インスピレーションの源”として
描かれ続けてきた女性。
自らの存在が「作品の道具」にされていることに強い違和感を抱いていた彼女は、
ある日、自分の身体から芽を出し、木になり、森になっていくという
奇妙な変化を体験します。
現実と幻想が交錯する中、ルイは自分の意志で“森として生きる”ことを
選び取っていきます。
林業者が読む意味とは?
① 森を「資源」ではなく「存在」として捉える
この物語では、森は「伐る対象」でも「植える対象」でもなく、
内在する命の象徴として描かれます。
林業者が“森を見る目”を養ううえで、
この視点の転換はとても新鮮で、そして大切な感覚です。
② 自然と自己の境界が曖昧になる感覚
作中では、ルイが木になっていく過程で、
根を張り、水を吸い、光合成し、仲間とつながっていく描写が出てきます。
これはまさに、森を構成する1本1本の木が担っている役割そのもの。
林業の現場で1本の木と向き合うとき、
こうした“見えないつながり”に思いを馳せたくなる作品です。
③ 森を“語られないもの”から“語る存在”へ
林業では「伐る木を選ぶ」「間伐を判断する」など、人間が判断を下しますが、
この作品は逆に、森が私たちを選び、包み込む存在として描かれます。
彩ちゃんなら、こう言うかもしれません:
「木の声を聴く、ってこういうことなんですね…!」
読後の問いかけ
あなたにとって森は、“見守るもの”ですか?
それとも“語りかけてくるもの”ですか?
森の中にいると、どんな感情が芽生えますか?
彩ちゃんが“森になる夢”を見たら、どんな物語になるでしょう?
『The Forest Brims Over』は、ファンタジーでも寓話でもなく、
「森を生きる想像力」を取り戻す小説です。
林業の世界にいるからこそ、この作品の深さを感じることができるはず。
森のことをもっと感じたい人に、そっと届けたい一冊です。
note更新のお知らせ(最新話)
彩ちゃんの安全物語 第3話|目立ての奥深さに目覚める
「刃を見れば、気持ちがわかる気がします」-彩ちゃんの感性が成長する1話です。
https://note.com/forestcollege/n/nacd700e3bf2e
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