

2025年8月5日
林業の魅力シリーズ第289弾
「森の女王」ブナの魅力-
文化・生態・利用まで徹底深掘り
ブナは“日本の森の礎”
ブナ(学名 Fagus crenata)は、
日本の冷温帯を代表する広葉樹であり、
その美しさと生態的役割から
「森の女王」とも呼ばれます。
全国の天然林に広く分布し、
とりわけ東北地方や中部山岳地帯では
ブナ林が広大な森を形成しています。
今回は、そんなブナの魅力を
「文化・生態・歴史・利用」の
4つの視点から深掘りします。
1.文化:ブナは神の木?
古来よりブナは「神の宿る木」として扱われ、
各地の山岳信仰とも深く結びついてきました。
特に東北地方では、
ブナ林は水の恵みを与える神聖な森とされ、
集落の守り神のように敬われてきました。
ブナの語源には諸説あり、
アイヌ語で「プニ(脂っこい)」が転じたともいわれ、
ブナの実の油分に由来するとも言われています。
2.生態:ブナが生み出す命の水源
ブナは大きな葉を広げ、雨を受け止め、
その水をゆっくりと土壌にしみ込ませます。
こうして蓄えられた水は、
森の下流にある田畑や
人々の生活に恵みをもたらします。
また、落葉広葉樹として豊かな腐葉土を形成し、
多様な微生物・昆虫・動物たちの
命を支える基盤を築いています。
ブナ林にはツキノワグマやテンなども生息し、
まさに生態系の中核です。
3.歴史:ブナ林と人間の関わり
戦前までは、ブナは「役に立たない木」とされ、
薪炭材や家具の下材として扱われていました。
しかし、昭和後期以降、
自然保護運動や水源涵養の重要性が再評価され、
ブナ林の価値が見直されるようになりました。
1980年代に「白神山地」のブナ原生林が注目され、
1993年にはユネスコ世界自然遺産に登録され、
世界的にもブナの重要性が認識されました。
4.利用:木材としての可能性と課題
ブナは硬くて重く、狂いが出にくいことから、
家具・床材・建具に利用されています。
とくに「曲げ木技術」との相性がよく、
曲木椅子(トーネットチェア)にも使われてきました。
一方で、乾燥や保存に注意が必要で、
製材や流通の工夫が求められる樹種でもあります。
また、薪としての火力やブナの実からとれる
油の利用も再評価されています。
次世代へつなぐ“ブナの森”
ブナは「美しい」だけでなく、
「生態系」「文化」「利用価値」の
すべてを兼ね備えた木です。
埼玉県でも一部の山地にブナが自生しており、
これを地域資源としてどう活かしていくかが、
今後の課題でもあります。
次回以降も、この「樹木深掘りシリーズ」では
一本一本の木に込められた物語を紹介していきます。
次回は「クリ(栗)」や「ケヤキ」なども候補です。
ご期待ください!
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