2024年8月8日
『絶望の林業』を読み解く
森林ジャーナリスト田中淳夫さんの『絶望の林業』は、
日本の林業の現状と未来を鋭く描いた一冊で、
業界が直面する多くの問題と、その中に潜む希望を指摘しています。
本書を通じて、林業の抱える深刻な課題を学び、
持続可能な未来に向けた取り組みを考えるきっかけとなります。
第1部:絶望の林業
成長産業の幻想
田中さんは、林業が成長産業であるという主張を現実と比較し、その乖離を指摘します。
林業への投資は、収益が見込める成長産業とは言えず、
多くの人々が期待しているような経済的利益をもたらさないことを説明しています。
この幻想が、業界全体の誤解を生んでいるのです。
木づかい運動の問題点
「木づかい運動」は持続可能性を謳っていますが、
実際には持続可能な林業を阻害する場合があると指摘します。
特に、短期的な利益を優先するあまり、皆伐の増加を招いている現状を批判しています。
林業の未来を考える上で、こうした運動の実情を理解することは不可欠です。
外材と国産材の誤解
外材が安価であるという誤解が広まっていますが、実際には国産材が外材よりも安価であり、
多くの人々がこの現実を知らないと田中さんは述べています。
この事実は、国内の木材市場に対する認識を根本から変える可能性を持っています。
第2部:失望の林業
林業現場の実態
田中さんは、所有者不明の山林や再造林の困難さ、そして労働環境の厳しさを描写し、
林業が直面する厳しい現実を明らかにしています。
林業労働者の苦労は、森林の持続可能性を考える上で避けて通れない問題です。
倫理的な問題
森林組合や素材生産業者の倫理的な問題も詳細に触れられています。
これには、資源の乱用や、不適切な管理が含まれ、業界全体の改善が求められています。
第3部:希望の林業
持続可能な林業の事例
本書は、吉野林業の歴史やスイスの恒続林など、持続可能な林業の成功事例を通じて、
林業の未来に対する希望を描いています。
長期的な視点で林業を見つめることが、持続可能な未来を築く鍵となることを示しています。
多様化と長期的視点の重要性
田中さんは、林業の多様化や長期的な視点の重要性を強調し、具体的な提案を行っています。
これにより、林業が持続可能な社会に貢献するための道筋が示されています。
おわりに
『絶望の林業』は、田中淳夫さんの鋭い洞察と詳細な調査に基づく一冊で、
林業の現状を理解し、持続可能な未来を考えるための貴重な手引きです。
林業に関心のある方だけでなく、環境問題や持続可能な社会に興味がある方にも、
ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
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