

2025年11月10日
林業の魅力シリーズ第351弾
【林業の未来】樹木個体IDで始まる
“スマート林業”——
デジタルツインが変える施業と安全管理
「木は“面積”じゃなくて“個”で見る時代に入る。」
現場でベテランの言葉をメモする彩ちゃん。
今日のテーマは樹木個体ID×デジタルツイン。
要するに、一本一本の木に番号を振り、
形状・傾き・成長・病虫害・伐採履歴まで紐づけ、
森全体をデータの写し身=
デジタルツインとして持つ発想だ。
なぜ今、個体IDか
皆伐・択伐の判断根拠を“感覚+経験”から“データ+経験”へ。
作業計画(集材ルート・保安林配慮・架線設計)が
事前に数値化できる。
乾燥・製材・流通までトレーサビリティが通る。
産地表示が強くなる。
どう始める?
測る:ドローン写真+地上LiDAR
(スマホLiDARでも可)で点群化。
識別する:幹中心線・胸高直径・樹高を推定し、
木ごとに番号付与。
つなぐ:現場アプリで「木ID ↔ 位置 ↔ 作業記録
(伐倒方向・造材長・危険木)」を紐づける。
回す:伐採→集材→運材→製材の各工程でIDを引き継ぎ、
歩留まりや欠点を逆参照。次の施業に学びを戻す。
職人技は不要になる?——ならない
データは“答え”じゃなく“材料”。
受圧木・風道・地形クセは点群だけでは語らない。
ノッチの取り方や伐倒の間は、人が読み、決める。
だからこそ、経験の言語化が前に進む。若手に技が残る。
現場で効くミニ手順(まずは1区画)
1haを上限にテスト。基準木100本にIDを振る。
伐倒前チェックに「木ID・伐倒方向・退避路・相手木」の
4項目を必ず入力。
造材は丸太1本=1レコード。
材長・等級・欠点メモを残す。
週1回、データと実景のズレ確認会。
ズレが宝。
何が見えるようになる?
「どの径級が欠けているか」が地図上で一目。
択伐の“抜き方”が精密に。
安全指標(傾斜×作業内容×気象)で危険日を可視化。
出荷先ごとの歩留まり比較で、“伐り方・造り方の最適”が
自分の現場の数字で分かる。
彩ちゃんの一言
「一本一本の“名前”が呼べると、森との距離が縮まる。
データは冷たくない。手入れの温度を、次の手に渡せるから。」
森は待ってくれる。
しかし、人の技の“引き継ぎ”は待ってくれない。
個体ID×デジタルツインで、
経験を次の現場に確実に残そう。
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彩ちゃんの安全物語 第10話が公開されました。
トラブルのあとに見えたもの――
『彩ちゃん、現場で学ぶ“支え合い”』
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