

2025年11月5日
林業の魅力シリーズ第349弾
クライミングスパー再考──
現代林業における登攀具の進化と是非
登るための「道具」を問う時代へ
かつて「木に登る」技術は、
熟練した感覚と身体能力に支えられていました。
しかし現代では、道具の進化が安全性・
効率性を大きく左右する時代です。
その代表格が「クライミングスパー
(ツリークライミングスパー、スパイクとも)」と
呼ばれる道具。
本日はこの登攀具にスポットを当て、
伝統と革新の間で揺れる林業現場のリアルな視点から、
再考してみます。
※写真はイメージです。
クライミングスパーとは何か?
クライミングスパーは、
脚に装着する金属製の爪(スパイク)付き登攀具です。
木の幹に爪を打ち込むことで、
伐倒対象の立木や枝打ち対象に垂直登攀するための道具。
主に使われる場面
高所枝打ち作業
伐倒前の剪定
倒木処理
都市部の庭木メンテナンス
メリット:効率性と即応性
現場でスパーを使う最大の理由は
早い・楽・少人数で対応可能なこと。
ロープを張る時間を削減
シンプルな装着で高所作業が可能
傾斜地でも安定しやすい
特に都市林業や造園業界では、コンパクトな道具で
効率よく作業を進めるスパーは重宝されています。
デメリット:木へのダメージと技術喪失
一方で、スパーには大きな課題も存在します。
爪が樹皮を傷つける → 生木や保存木には不向き
「登る技術」の喪失 → 道具に依存しすぎると危険察知能力が鈍る
安全管理が不十分だと落下事故に繋がる
また、間伐や間引きで使われる場合でも、
「木を生かす」林業と相容れないという批判もあります。
海外と日本の違い
欧米では、スパー使用に対して厳しいルールが
設けられているケースもあります。
保存木には禁止
必ずロープ併用(SRT、DRT技術)
ANSI(アメリカ国家規格)や
ISA(国際アーボリスト協会)のガイドラインが明確に
一方、日本では個人技術と慣習に依存しがちで、
道具選びや使い方に地域差が大きいのが現状です。
未来に向けた提案
林業現場において、「便利だから使う」ではなく、
「この木、この場、この目的に合っているか?」
という判断軸を持つことが重要です。
スパーを「使い分ける知恵」
「登攀技術」と「道具」のバランス
若手が本質を学ぶ教育環境の整備
こうした姿勢こそが、
未来の林業を支える根っことなるはずです。
登攀具に宿る“哲学”を見直そう
道具は人を助けもすれば、怠惰にもさせます。
だからこそ、「なぜこれを使うのか?」
という問いを忘れない林業人でありたい。
クライミングスパーは、
まさにその問いを私たちに突きつける登攀具。
技術と道具の融合、そして森への敬意──
それを忘れずに次世代へと繋いでいきましょう。
note更新情報(2025/10/29更新)
彩ちゃんの安全物語 第9話「声より先に、合図で伝える」
“声”だけに頼らない──
安全な作業のための「合図」の重要性を、
彩ちゃんが実体験をもとに語ります。
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